L'art de croire             竹下節子ブログ

共和制とファシズム

 佐藤優さんによれば、ファシズムは「共和制の構築的な運動」(『一冊の本』1月号)なんだそうだ。
 
 合法的な手段で選ばれた「われらのリーダー」「領導者」の周りに国民が結束して、国益一筋になる。ファシズムは民主主義の一形態と思えるそうだ。

 それに対して日本は、超越的な祭主である天皇がいるから、本来はそれがファシズムの歯止めになっている、という展開だが、いくらなんでも短絡的じゃないだろうか。

 まあ、私は現在、サルコジという独裁者が暴れているフランスにいるので大きなことは言えないが、そのサルコジだって、投票者の半数近くの49%には忌避されたわけだ。

 国民の直接選挙で選ばれた代表者がファシズムのリーダーになるには、何か別の要因で、選ばれた時にすでに圧倒的多数の支持を得ていた場合だろう。ファシズムの原因は、直接選挙そのものにあるのではなく、すでにその時の国際情勢などが影響しているわけだ。
 国が一応健全な状態にあれば、独裁者を避けるためだけにでも、優勢な側に反対票を投じるものが出るわけで、「われらのリーダー」だから何でもできるという方にはいかない。
 半数に近い「反対者」を常に擁しているといる緊張感が、フランスみたいな国では、「革命もあり」ということで、権力者の暴走の歯止めになっている(と思いたい)。

 第一、「民主的」に選ばれたヒトラーが最悪のファシズムでヨーロッパを壊滅させたというので、それを教訓としたヨーロッパは、「多数決の原則」よりも普遍的な「人権」の理想が優先されるべきといったような危機管理の安全策をいろいろ用意している。

 人種差別的極右を排除するという意識が強いから、オーストリアのハイダーが選挙によって1999年に連立政権入りした時に、EU諸国は猛烈に反発して辞任に追い込んだ。

 2002年のフランスの大統領選でやはり極右のル・ペンが最有力候補だった社会党のジョスパンに勝って決選投票に登場した時は、彼にノンというためにだけ、すでに人気のなかったシラクが前代未聞の82%の得票で再選された。誰もがその意味を知っていた。

 どんな制度も運営上の失敗はつきものだが、EUは一応、彼らの原則に従って学習したわけだ。

 「超越的なもの」を奉じているからファシズムの歯止めになるというなら、国益の枠を超えた「人権」だって、「自由・平等・友愛」の共和国精神だって歯止めになるはずだ。

 実際は、権威と権力はすぐ癒着したり、「超越的なもの」がただの道具や口実や旗印として利用されたりするので、その辺は、共和国でも君民共治国でも、残念ながら変わらない。

 排外主義によってピュアになって生き残ろうという選択と、多様性の中で連帯して共生して生き残ろうという選択は、生命戦略としては、どちらもありなのかもしれない。でも、今の地球の現実の前では、もう、多様性の中の連帯にしか希望はないと思えるのだが。

 後は、佐藤さんもいってるように、福祉国家型社会民主主義、を自覚的に育てていかないと。それが国家としての統合が弱くても、それはそれで、狭い国益観を乗り越えるチャンスにつながればいいんだけれど。

 

 
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by mariastella | 2009-01-21 01:49 | 雑感
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