L'art de croire             竹下節子ブログ

フランスの海外県の「造反」

今、グアダループやマルティニックで、ゼネストなどが起こり大変なことになっている。

ヨーロッパの多数の「地域」の中で、もっとも失業率の高い4地域が、すべてこれらの「フランス海外県」だそうで、25歳以下の若者の失業率は70%に近いというから深刻なのだが、この話になると、地政学的にはこれらの海外県や海外領土はヨーロッパじゃないだろう、という議論が必ず出てくる。

フランス「本土」に住んでる日本人なら一度は、えっ、カリブ海の島なんて植民地の存続じゃないの、と思うのだが、そのことをフランス人に言うと、なんだか話がうやむやになる。

確かに、旧仏領インドシナとか北アフリカとかの旧植民地なら、戦争や独立戦争を経て、歴史のコンセンサスとして、帝国主義的支配は過ちだった、民族自決が正しい、みたいな「反省」があるから偽善的でも一応落ち着きがいいのだが、たとえば、海外県のマルチニックなどはちょっと違う。

すでに先住民の文化があったところに、より優勢な(軍事)技術を持った国が乗り出していって、支配し、その後で、謝って出て行く、という構図でなく、植民者の他に、アフリカから奴隷を連れて来て労働力にした。その「奴隷の子孫」は、アフリカに帰るわけにもいかない。

フランス系のハイチなんかは、フランス革命の精神を受けて、世界初の黒人の共和国になって独立したが、「白人」がどっと引き上げると、インフラのメンテナンスがなくなって、世界有数の貧困国になったままうっちゃられた側面がある。民族自決という文脈ではない。

まあ、帝国主義の終焉の後、住民投票とかがあって、海外県や海外領土の人たちは、自主的に、フランスの一部として残ることを選択した、ということになっている。

しかし、フランスがなまじユニヴァーサリズムの看板を上げているので、これらの海外県や海外領土では、歴史によって紡がれた差別や不利に見てみぬふりがなされてきた。そのツケが今頃来ているのは遅すぎるといっても言い。

パリ地方にいると、一昔前では、見かける黒人というのは、食い詰めてアフリカからやってきた移民という風情が多くて、黒人というとアメリカ黒人のスポーツ選手のような体格のいいイメージのある日本人にとっては、驚くほど貧相に見えることもあった。

ところが、海外県からやってくる黒人は、アフロ・アメリカ人と同じく、概して体格がいい。奴隷労働者としての過酷な生存条件に耐え抜いた強者だからだろう。サッカー・クラブがかの島々に有望選手を引き抜きにいくことはよく知られている。

私が直接よく知っていた二人のマルティニックの黒人は、男性の左官屋さんと、女性の飛行機の客室乗務員であり、いずれも、音楽の生徒であった。男性は小山のように大きく、強烈な体臭を放ち、女性は元ミス・カライブで、これも圧倒されるようなグラマラスなボディの持ち主だった。彼女とは一緒に外出もしたが、必ず男たちが振り向き、声をかけてきた。

私が日本人であることもあり、彼らの状況について素朴な疑問をいつも投げかけていたので、マルティニックの状況について、いろいろ話を聞けた。

アメリカの独立戦争のことや、フランス革命、日本の過去の植民地の話、ローマの属領だったイエスの頃のユダヤの抵抗勢力、今のパレスチナの紛争、そういうテーマに思いをめぐらせる度に、フランス海外県をめぐる偽善や光と影が、ある種の実感を与えてくれる。

いつかこの話も書くことになるだろう。今は暇がないので、覚え書きまで。

 
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by mariastella | 2009-02-18 22:40 | フランス
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