L'art de croire             竹下節子ブログ

ジム・ランビーのUnknown Pleasures

 原美術館にジム・ランビーのEXPOを見に行った。

 こういう元私邸の小ぶりの美術館を全部一人のアーチストに任せるという企画は、ランビーのように、床にテープを張っていくザ・ストロークスという作品にはうってつけだ、錯視効果の他に、廊下も階段も部屋の床もドアの向こうもみんな一続きになる。それが彼のねらっているところでもあって、そういうフローなイメージは、光や音や水のメタファーなのである。そこに、各種星座型に配したドアノブとか、鏡効果とかで、宇宙的テイストを入れて、レコードボックスにコンクリートを流した立方体をさまざまに切って床に配することで、枯山水の石のように、床のそこに沈んでいくような、あるいは浮かんでいるような効果を与えている。

 ジム・ランビーはミュージシャンでもあり、この作品では、各部屋を巡る人々にいかに音楽を喚起するかというのを目指したらしく、ポスターのコラージュ作品の中のミュージシャン、レコードジャケットの背などでリードし、ブルースの部屋にはブルーのペンキで塗ったドアを配するとか、要するに「共感覚」的工夫を凝らしている。
 
 それが成功しているかどうかは別で、私には音楽はキャッチできなかったが、全体の有機的な感じは好きだ。枯山水のような箱庭宇宙を俯瞰するというよりは、皮膚のような床を歩いて有機物の胎内にいる感じだ。

 おもしろいのは、元ダイニングルームだった部屋には長いテーブル画あるべきスペースに、ペイントした椅子の破片を連ねて列車のように重ねていたり、階上の寝室に向かう階段の壁にベッドのマットレスが掛けてあったり、みっつの寝室にはポスター作品があり、「家の記憶」みたいなものと呼応するようにつくっているところで、庭園の借景や邸内のカーブした空間にインスパイアされている。

 その意味で、直島の民家プロジェクトとすごくよく似ている。

 この展覧会でランビーの使った椅子などはグラスゴー周辺のジャンクショップで集めてきたらしい。
 彼に直島の民家を一軒まかせれば、直島の流木や民具をペイントして座敷ダイニング風にするだろうし、ザ・ストロークスもどのように変化するのか、ドアがふすまペイントになるのか、と、非常に興味がある。

 直島は空の色、海の匂い、湿気、空気も、独特だから、さぞや面白いハイブリッドなものができるだろう。
 ランビー自身も、自分の作品は鑑賞者のリアクションによって完成すると言っているが、インスタレーション・アートでありながら、その「場」を超えて、他の場への想像をどんどん広げていけるという意味では、成功している。
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by mariastella | 2009-04-20 12:02 | アート
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