L'art de croire             竹下節子ブログ

V・I はなぜ洗礼を受けていないのか

 前回の、V・I が、クリスチャンではなかったことについて

 http://spinou.exblog.jp/12753225/

 もう少事情を知りたくて、つい『ダウンタウン・シスター』を読んでしまった。

 いろんなことが分った。シカゴのカトリックといえば、何となく、イタリア系、ポーランド系、アイルランド系、を想像していたが、ボヘミア系もしっかりコミュニティを形成しているみたいだ。そして、ポーランド系とは東欧つながりでまあ、連帯感がある。そういえば、ハンガリー・レストランというのも出てくるから、カトリック系東欧がしっかり存在感があったのだろう。

 市会議員の大物にアート・ジャーシャック、その秘書はメアシック、未婚で妊娠してボヘミア地区から逃げてきたのがルイーザ・ジャイアック、みんなしっかり、ボヘミア系の名だ。未成年で妊娠したルイーズは、聖ウェンツェルの修道女の施設に入れられようとした。聖ウェンツェルは10世紀のボヘミア大公でボヘミアの守護聖人聖ヴァーツラフのことだから、分りやすい。聖ウェンツェル系のカトリックがモラルの番人だったわけだ。
 ウェンツェルに行くのを拒否して家を出たルイーザが流れてきたのがポーランド地区。一応東欧系カトリック地区だ。そこで彼女を受け入れたのガ、V・I の母、ガブリエラだった。

 V・Iは、ジャイアックの実家に行って、「イタリア女の娘」とか「混血のあばずれ」とか罵倒される。ここで、ポーランド人であるヴィクの父がイタリア人と結婚しただけで、イタリア女とか、混血とかいう偏見をもたれていたことが分る。アイルランド人なら、アッパークラスで、聖パトリック祭がシカゴで一番盛大なくらいだから事情は違ったろうが、イタリア系は東欧系カトリックから見ると決して有利な立場ではなかったことが想像できる。

 ガブリエラは、「聖ウェンツェルから来た正義のご婦人たちが」ルイーザのうちの周りを練り歩くと、怒り狂って出てきて彼女らを追い払った。そのガブリエラは自分の隣人たちからは、非常識な女として批判されていた。特に娘であるヴィクの「洗礼を省略した」ことや聖ウェンツェルのシスターたちのクラスにやることを拒否したことである。つまり公教要理のクラスにやらなかったことだろう。ポーランドでは子供が7、8歳になった時の初聖体の儀式がとても華やかなイヴェントである。ヴィクはそれをしなかったらしい。

 それもこれも、多分、ガブリエラが、叔母の夫と不倫の関係にあったこととの罪悪感と、それに関して叔母に責められ続けてきたことへの反撥との両方があって、教会や宗教に関する忌避反応ができていたからなんだろう。ヴィクはその事情を知らなかったわけだが、東欧系地区で「母がイタリア人」という特殊な環境にあることと、母が音楽家=アーチストであるという意識からリベラルなのだろうと漠然と思っていたのかもしれない。
 
 ここではその他にメソジスト系の同窓生とか、ドイツ系の大金持ちとかが出てくる。
 ヴィク自身も母校に行って、時代の差を感じたようだが、1952年あたりの生まれだと思われるヴィクの育った頃のシカゴでは人種や性別や宗教の差が、大きな意味を持っていただろうし、それは今でも影で尾をひいて暗黙の了解がいろいろあるのだろうな。 日本やフランスのような国に住んでいるとなかなかぴんと来ない。

 全く関係ないが、この小説の中で、縛られて毛布にくるまれ沼地に投げ込まれて死にかけたヴィクを愛犬のペピーが、沼の腐臭に関わらず、見つけ出し、救い出す。その後もずっとヴィクを守ろうとする。

 そのシーンを読んでると、猫たちと暮らしてる自分がちょっとあわれだ。こいつらは、私が行方不明になっても、ぜーんぜん知らん顔であろうことは目に見えている002.gif
 やっぱ、信頼できるのは犬だなあ。でも頼りになりそうな大型犬は寿命が10年くらいだから、今から飼い始めても、私が老犬介護をするはめになるかもしれない。
 
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by mariastella | 2009-11-09 06:15 | 雑感
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