L'art de croire             竹下節子ブログ

フランス人の働き方

 先日TVのニュースで、フランス人はアングロサクソンや北ヨーロッパといかに違うかということを解説して、「知ってますか?」という口調で、「アングロサクソン国や北ヨーロッパでは、19時を過ぎても会社に残っているのは、仕事の効率が悪いことの証明なんだよ、ところがわがフランスでは19時過ぎても働いているのは、熱心だという証明(engagement) なんだから・・・」と批判的に言っていたのを聞いた。

 そこには「デキる人間はてきぱきと仕事を終わらせる。デキないやつがぐずぐずしているんだ」というネオリベ的なコストパフォーマンスの考えがもちろん明らかなのだが・・・
 
 30年前は、企業の日本人でフランスに来た人は、フランス人がすごく働くことに驚くことが多かった。

 「いやあ、フランス人はラテン系で働かないのかと思ってたら、上の人はとにかくよく働く」

 というのだ。ナポレオン以来のフランスのエリート養成システムは、いかによく働くための心身能力があるかの選抜なので、それは実際当たっている。エリートはよりたくさん働く義務があるというか、それを期待され、また身についているということだ。それは今も変らない。

 もう一つ最近よく言われる「比較」は、アングロサクソンの企業戦士は、昼もコーラとサンドイッチだけをPCの前で働きながら一人で食べ、フランスでは、昼休みが昔の2時間から1時間が主流になった今でも、基本的には同僚とそろっておしゃべりしながら食事を楽しむ、という違いだ。これはどちらかというと、フランス人がヨーロッパで最も肥満度が少ないことも含めて、バランスよくストレスをためない食べ方をしている、というポジティヴな言われ方をする。どちらかというと自虐が好きなフランス人だが、さすがに、昼間パソコンの前で一人で食べるのが勝ち組で効率的だというほどには、メンタリティは変化していない。
 食事を楽しむのは、エリートも単純労働者も同じである。アンリ4世の時代から「美食」がトップダウンで政策になった国ならではの根強いこだわりだ。

 日本はどうなんだろう。つきあい残業というのはよくきくし、自分の仕事をもう終わらせていても、周囲が残業していると定時に帰りにくいというのは日本的にはすごく分る。
 食事はどうだろう。女子社員が連れ立っておしゃれなランチというのはイメージがわくが、エリートビジネスマンは、ビジネスランチ以外に同僚と楽しく食事するのが普通だという感じはしない。
 
 日本では儒教の影響で、上の階級はむしろ質素な食事を心がけ、食文化というのは、芝居小屋や遊郭などの「悪場所」で洗練された歴史もあるから、「楽しいランチ」は「女子供」のものというのが残ってるかもしれない。

 アングロサクソンと比べた時、日本とフランスは似てるなあと思うことがよくあるのだが、もし日本の企業人が、昼はアングロサクソンのように慌しく食べて夕方はフランス人のように自主残業するのだとしたら、かなり気の毒だ。

 サラリーマンの鬱病や自殺が増加しているんだから、この問題はきっちりと考える必要がある。
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by mariastella | 2010-03-01 20:23 | フランス
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竹下節子が考えてることの断片です。サイトはhttp://www.setukotakeshita.com/
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