L'art de croire             竹下節子ブログ

Pièce montée

 先日観た『シャッター・アイランド』があまりにも期待はずれだったんで、全然違うタイプのフレンチ・コメディで気分を変えてみようと思ってDenys Granier-deferreの『Pièce montée』を観た。

 Julie Gayet, Charlotte de Turckheim, Clémence Poesy, Jérémie Renier, Jean-Pierre Marielle, Danielle Darrieux, Christophe Alévêque, Léa Drucker, Julie Depardieu, Hélène Fillières などのうまい俳優がたくさんそろっているので、見ている間は飽きない。群像処理もまあうまい。 

 半世紀も離れていた恋人同士が孫娘の結婚式で司祭と祖母という立場で再開するという話は、すごくステレオタイプなのに、年老いた元恋人同士のくさいセリフをここまで感動的に見せるのは、芸の力なのだなあ、と、ダニエル・ダリューが単にある世代のマドンナを超えて名女優なのだと感心した。

 花婿役のJérémie Renierは、ダルデンヌ兄弟の『L’Enfant』で赤ん坊を売ったりする若い父親役が印象的だったベルギーの男優で、これも、うまいと思った。

 ジュリー・ドゥパルデューとエレーヌ・フィリエールの最後のダンスシーンは、こちらのゲイ雑誌『テチュ』に、このシーンを観るだけでもこの映画に行く価値あり、と書かれていたが、あまり私の琴線に触れなかった。ジュリー・ドゥパルデューがあまりにもエキセントリックで女っぽいからかも。

 この種の女性二人のダンスのからみシーンではやはり、もう古いがベルトリッチの『暗殺の森』のステファニア・サンドレッリとドミニク・サンダの伝説的シーンとつい比べてしまう。
 レズのカップルは私の周りに何組かいるが、両方ともがアンドロギュノスっぽくて、いわば「宝塚の男役」が二人いるようなカップルが一番好みだ。
 「宝塚の男役」二人が女装しているみたい、というのはもっといいなあ。ドミニク・サンダたちってそんな雰囲気だった。

 ダニエル・ダリュー演じる祖母が、結婚した孫娘に、「時々姿を消しなさい、そうしていつも求められるようにするのよ」とアドヴァイスするのも面白かった。彼女は何しろ50年も恋人の手の届かないところにいたことで、ずっと過去の恋人から想われ続けていたと後で分かるので、なかなか説得力がある。

 全体としてヘテロセクシズムと偽善とを揶揄しているのがテーマでもあるのだが、とてもフランス的だ。
 結婚とか結婚式とか子育てとかいうシーンになると、フランスと日本はかなり意識の差が出てくると思う。フランスではブルジョワ階級の偽善者ぶりも半端でないが、その暴き方も伝統的に筋金入りだ。

 聖アガタ教会のアガタ像がショッキングで隠してしまう母親、式を手伝う子供のミスで聖別するための無酵母パンが全部床に落ちたこと、とか、おもしろいディティールもあった。ま、テレビ画面でも楽しめるタイプの映画なので、わざわざ出かけるほどのことはなかったかも。

 
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by mariastella | 2010-03-15 00:52 | 映画
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