L'art de croire             竹下節子ブログ

The King's Speech

Tom Hooper監督でColin Firth主演の

The King's Speech

を観た。

日本でのタイトルは『英国王のスピーチ』?

英国王にあたる部分が

原題が大文字の「The King・・・」で、

フランス語タイトルは

『Le Discours d'un roi  』

と、小文字の「a king」

に相当するもので、

王一般や英国王やこの映画に対する言語別、文化別の微妙な視線の違いが感じられる。

皇室の皇位継承問題についていろいろ話題になっている日本での受け止められ方はまた独特のものがあるのだろう。

高貴な身分の者の苦しみやら努力やら友情やら家族愛に加えて第二次世界大戦というドラマティックな背景という要素を並べるだけでリスクの少ない感動ものに仕上がる。

私の注意を引いたのは、

ジョージ5世の次男であったアルバートが兄の退位にともなって急遽即位することになった時、

「アルバートの名ではドイツっぽいから、ジョージ5世との継続性を強調したジョージ6世でいきましょう」

とアドヴァイスをうけたことだ。

兄さんはディヴッドと呼ばれていたのにエドワード8世だった。調べてみると、正式の名は

「エドワード・アルバート・クリスチャン・ジョージ・アンドルー・パトリック・デイヴィッド・ウィンザー」で、

「名前のうち、エドワードは伯父クラレンス公アルバート・ヴィクター、クリスチャンは曾祖父のデンマーク国王クリスチャン9世にそれぞれ因んだもので、アルバートは曾祖母ヴィクトリア女王の強要によって含まれたものだった。また、洗礼名のジョージ・アンドルー・パトリック・デイヴィッドは、いずれもイングランド、スコットランド、アイルランド、ウェールズの守護聖人に因んだものだった。ちなみに、家族と友人からは終生、最後の洗礼名である“デイヴィッド”の名で呼ばれ続けていた。」(Wikipedia)

とある。では、やはり最初のいわゆるファーストネームを王の名にしていたわけだ。
セカンドネームの「アルバート」は「曾祖母ヴィクトリア女王の強要によって含まれた」とあり、次男の時にはこれが晴れてファーストネームに昇格したわけだ。

そのアルバートというのは、曾祖母ヴィクトリア女王がこだわったという通り、ヴィクトリア女王の夫アルバート公の名だ。で、そのアルバート公は、ドイツのザクセン公子で、やはりザクセン公国出身のヴィクトリア女王の母方の従兄にたる。もともと今のハノーヴァー朝はドイツ系で、第1次大戦の時にすでに敵国ドイツのイメージを避けるためにウィンザーと改名した。

で、第二次大戦に参戦する重大な局面においてアルバート王というのはまずい。ここはイングランドの守護聖人であるジョージ(洗礼名には含まれている)で行こう、ということになったわけである。

このことは、1978年にヨハネ=パウロ1世が在位33日目に急死した後で選出されたカトリック初のポーランド人教皇のことを思い出させる。
彼がポーランドの聖人であるスタニスラスという名で即位したいというのを、それではあまりにもポーランド色が強いのでヨハネ=パウロ2世にしろとアドヴァイスされたという話だ。

フランス語ではアルベールという名はベルギー王とかモナコの大公とか王の名としてもなじみだし、もとになった聖人はフランスも込みのフランク王国系ルーツなので、いわゆる「ドイツ色」があるわけではない。

映画の中でもその雄弁ぶりがジョージ6世と比較されているのはヒトラーだが、ドイツ人は名前をずらずらとつけないのだろうか。アドルフというのはゲルマン系の名で、聖人もいないわけではないが、近代以後のイギリスやフランスではごく少ない名だ。

ヒトラーのすぐ下の弟(夭逝)はEdmundという。もしヒトラーのファーストネームがEdmundだったりしたら、エドワード8世も別の名前で即位していたかもしれないな。
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by mariastella | 2011-02-17 19:36 | 映画
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