L'art de croire             竹下節子ブログ

アラブ世界で起こっていること  その4 フランスとアメリカ

エジプトの次はイエメンかバーレーンかと思っていたがリビアになりそうだ。
その血なまぐささは半端でなく、2007年にサルコジ大統領がエリゼ宮にカダフィを歓待した時に「フランスは血にまみれた足を拭くマットではない」と批判して左遷された当時の人権大臣ラマヤデは溜飲を下げているだろう。

アメリカもイギリスもドイツも、当時すでにカダフィと石油と武器の交換貿易の成果をあげていて、フランスもあわてて遅れを取り戻そうとしていたのだ。

(追記:ヨーロッパでリビアに最も利権を確保しているのは旧宗主国イタリアであることはもちろんだ。もう一つ、カダフィはアフリカ大陸からヨーロッパへの不法移民を防ぐための海岸線警備に有能だった。昨年、それを強化して「ヨーロッパを黒くしないために」とEUに5億ユーロだかを要求し、さすがに断られていた。)

サルコジ政権以来、フランスは

「人権理念よりもリアルポリティクスね」

となりふり構わずやってきたが、それでも、その都度、それを攻撃したり揶揄したりする人が、野党にも庶民にもたくさんいる。

それに加えて、フランスに染みついた「中華思想」と「自虐癖」のせいで、いったん、自分たちの化けの皮が剥がれれば、与野党の区別なく過去の政治家たちのご都合主義を皆が暴き始める。

「中華思想」と「自虐癖」はセットになっている。

自分たちが何でもイニシアティヴをとっていると思っているから、失敗したと思った時に「…のせいだ」と責任を押しつけることが難しく、わりと簡単に自己批判をするのだ。

フランス人のアイデンティティの一つが「フランス革命の肯定的評価」なのだが、これが相当苦しい欺瞞に満ちたもので、それでも、啓蒙思想によって生まれた理念を背景に「抑圧されているものが支配者を倒した」という図式にしがみつくことで、かろうじて良識の居場所を確保している。

エジプトのユモリストがフランス人のインタビューで、

「ムバラクが死んだらナセルとサダトが待っていて、『死因は何だ、毒か、銃器か』と聞かれて『facebook』と答えた」

というジョークをとばしていた。

(追記:リビアには150万人のエジプト人が働いているのだそうで、誰でも家族か知り合いがリビアにいるので現在も今後のことも心配だと言っていた)

さらに、インタビュアーが

「これからのエジプトの取る道についてフランスの知識人に期待するか」

と聞いたら、

「外国や世界のことなんかどうでもいい。エジプトの若者に期待する」

と切って捨てたのが気持ちよかった。

これを聞いてまたフランスは自虐に向かうわけだが、アメリカではこういうことは起こらない。

彼らの建国神話の中では、「アメリカは宗主国の支配に打ち勝って独立した」というのが肯定的になっていて、基本的にずっと変わらない。帝国主義的植民者の支配に打ち勝って独立したというのでなく、自分たちが植民者で、先住民のホロコーストの末に出身国から独立しただけなのに、この欺瞞をずっと抱えたままアメリカン・ヒストリーでごり押ししている。無理があるのだが、無理があるほど必死に粉飾するものだ。

フランスの場合は、革命の後、テロル、内戦、ナポレオン戦争、新旧勢力入り混じりあうヨーロッパの再編成、さらなる2度の革命と王政復古に帝政復古、と、ごまかしのきかないボロボロさを呈した上に、2度の大戦でガタガタになり、ドイツに占領されたり、ベトナムやアルジェリア戦争の罪悪感がつもりつもっている。

その上で、なお、

「でもフランス革命は正しかった」

ことにしよう、という決意は、それなりの「抑止力」をとどめていると思う。

それに比べると神に祝福された「アメリカ民主主義教」の一宗派独裁のアメリカは、一党独裁のどこかの国と変わらないな。

http://www.youtube.com/watch?v=N-Vy8fFnz18&feature=player_embedded

の映像が世界中に流れたのは痛快だ。ヒラリー・クリントンに反抗する老人は公衆の面前で手錠をかけられて排除されるのだから。

これからどうなるか分からないが、懐疑よりも希望を抱くところにしか平和は見えてこないと思う。
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by mariastella | 2011-02-24 20:40 | 雑感
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