L'art de croire             竹下節子ブログ

アラブ世界で起こっていること その6 チュニジア

流血沙汰が比較的少なくて独裁者ベンアリが早めに国外逃亡したことでアラブ世界の「民主化ドミノ現象」のきっかけとなったジャスミン革命のチュニジアで、新たにヴァイオレントな衝突が起こっている。

フランスの外務大臣のMAM(Michèle Alliot- Marie)は、この革命初期に、チュニジア政府に「世界的に知られたフランスの治安維持のノウハウを用いて暴動を鎮める」提案をするという失態のせいで、さすがに更迭されそうになっているが、それでもここまで持ちこたえたのは、政権にある人々がみな「脛に傷持つ」感を持っていたからだろう。

それはMAMが年末のチュニジアのバカンスで、ベンアリに近い人間から接待を受けていたというスキャンダルのスクープが続いたからだ。

政権にある者は、社会党政権の時代であっても、あちこちの国の権力者の接待を受けている。アフリカの独裁者であったベンアリでもムバラクでもカダフィでも同じだ。

理由はいろいろあるだろう。

武器だの飛行機だの原子力発電だのといったものをセールスして国益を図りたい。

石油や鉱物資源などの利権を確保したい。

これら「独裁者」たちは、一応「民主主義」の選挙で選ばれている。

他の主権国の内政に干渉はできない。

彼らは「西洋帝国主義」に搾取されてきたアフリカの独立のために戦った「英雄」たちの系譜にある。少なくともそれを看板にしている。だから引け目がある。

ここ20年は、グローバリズムと新自由主義経済のせいで、実はどこの権力者も、国益がどうとかイデオロギーや理念がどうとかいうのはもうどうでもよくて、ただただ、互いに私腹を肥やす可能性に目がくらんだ。

などなど・・・

若者が不満を爆発させることも、既得権益者がなんとしてでもそれを守ろうとするのも、ある意味「人間的」であり、単純な善悪や正・不正の二元論でくくれないのはもちろんだ。

しかし、力と経験とがある者は、それを、より力のない者や経験の少ない者のために役立てる義務があるのは明らかである。

といっても、実際には、権力者は、平気で建前と本音を使いまわすし、欺瞞や偽善やデマゴーグを駆使する。

これはアメリカだろうが、チュニジアだろうが同じだ。

そして人は、自分の信じたいものを信じ見たいものを見る傾向があるから、欺かれやすい。

欧米の政治家のアフリカ軍事独裁者との慣れ合いは、分かりやすい。

でも、そのような利権もなく国家権力もなく、クリーンで、弱者の側に立つ原則を持っている人でさえも、騙される。

独裁政権を長く維持できているような人たちは、それなりのカリスマ性や演技力があり、裏で私腹を肥やしていても、表は本気で理念を信じていることもあるのだろう。だから説得力があるのかもしれない。

共産党の不破哲三さんが2003年にチュニジアの与党党大会に招待された時の話を読んでいると、感慨を覚える。

http://www.jcp.or.jp/akahata/aik2/2003-08-25/01_03.html

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一九八七年にベンアリ氏が大統領になってからの党大会には、すべて大会の性格を象徴する合言葉が選ばれている。一九八八年が「救国の大会」、一九九三年が「堅忍不抜の大会」、一九九八年が「卓越の大会」、そして今回が「大志の大会」である。
 開会演説に、その「大志」を具体化した計画や政策がもりこまれているわけではないが、その主眼はなによりも、国民生活の安定的発展にむけられているようだ。大統領演説が、冒頭の部分で、かつての民族独立の任務と独立チュニジアの社会的発展という現在の任務とを一つの流れのなかで表現したことは、そ の象徴だったかもしれない。
 「この大会をもって、立憲民主連合は、新たな世紀に入る。われわれの活動は、国の解放の時代だけにとどまらない。植民地時代の立憲民主同盟の活動 の焦点は、『国土の一ミリでも植民地下にあれば国民の尊厳は不完全だ』という自覚を広めるところにあった。現在われわれは、『みじめな暮らしをしている国 民が一人でもいれば、国民の尊厳は不完全だ』という自覚を広める努力をしている」http://www.jcp.or.jp/akahata/aik2/2003-08-31/03_02.html

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とか、

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 独立闘争といえば、その指導者だったブルギバ前大統領にたいする評価も、興味ある点だった。ブルギバは、政権党・立憲民主連合の創立者であり、三 〇年代からチュニジアの民族独立闘争の先頭に立ってきた、いわゆる「建国の父」である。一九五六年に独立をかちとり、一九五七年に王制を廃止して共和制に転換した時、初代大統領になり、三十年にわたってこの地位にあった。最後の時期には、制度的にも自分を「終身大統領」に位置づけたうえ、個人的な権力に固 執する専横の傾向が強まった、と言われている。
 そのブルギバ氏に任命された最後の首相がベンアリ氏だったが、ベンアリ氏が首相就任の一カ月後に、「執務不能」という医師の診断書をブルギバ大統 領につきつけて「終身」大統領の退陣を実現したのが一九八七年、それによってベンアリ大統領を中心とする現体制が実現したのである。一九八七年のこの政変は、論者によっては「無血革命」とも呼ばれるが、公式にも、国と党を破滅から救った歴史的な「改革」と位置づけられている。
 興味深いのは、ブルギバを強引に退陣させた一九八七年が、現在のチュニジア政治の出発点になっているにもかかわらず、歴史の見方がブルギバ時代の全否定とはなっていないことである。ブルギバ前大統領は、退陣後に亡くなったが、首都チュニスの中心をつらぬく幹線道路は、いまでもブルギバ道路である。 この大会でのベンアリ演説でも、ブルギバをはじめとする先人たちの建国の功績への感謝と、ブルギバ体制を終結させた一九八七年「改革」への礼賛とが並列し て強調され、ブルギバへの評価を述べた時には、ひときわ大きな拍手が起こる、という情景があった。
 この評価は、表面だけの儀礼的なものではないようだ。私たちの世話役ハマム氏の解説によれば、ブルギバは民族独立闘争で大きな賢明さを発揮した指 導者で、その賢明さは、たとえば、第二次大戦の時、反フランス路線に固執することなく、反ファシズムの立場でフランスをふくむ連合国に協力する立場をとっ たところにも、表れたのだという。
 第二次大戦中に世界の反植民地独立運動がとった路線の問題では、インドにこれとは対照的な実例があった。国民会議派をはじめとするインドの独立運 動が、反イギリス路線を根拠に、第二次大戦に「中立」の立場をとり、一部には日本軍に協力する流れさえ生まれたのである。ハマム氏が、世界の大局を見るブ ルギバの賢明さを評価するのは、納得できる話だった。こういうことを含めて、「建国の父」ブルギバにたいする高い評価と、晩年のブルギバ専横を終結させた一九八七年「改革」への礼賛とが、合理性をもって共存しているのだとすると、ここに、独立運動の歴史にたいするとらえ方のチュニジア的な柔軟さがあるのかもしれない。
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik2/2003-09-01/03_01.html

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などというくだりを読んでいると、おそらく誠実なだけに、MAMだのサルコジだののご都合主義やマキャベリズムとはかけ離れている分、複雑な気分にさせられる。
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by mariastella | 2011-02-27 22:50 | 雑感
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