L'art de croire             竹下節子ブログ

アラブ世界で起こっていること その7 傭兵

リビアの情勢がますます血塗られている今、一番胸が悪くなるのはカダフィが黒人の傭兵を使っていることだ。
破格のサラリーを受け取っている噂もネット上でとびかう傭兵のやり口はかなり残虐であるらしいが、もっと嫌なのは、リビアの反政府派の人々が、たとえばベンガジで傭兵を捕らえた時によってたかってリンチして、そこに人種差別の言葉が露になっている事実だ。

西洋諸国の植民地になる前のアフリカにはガーナ王国、マリ王国、ソンガイ帝国のような黒人の強国があり、その支配者たちは戦時捕虜や領地内の貧しい人々をアラブ人やらトルコ人やらに売買していたことが知られている。

黒人奴隷貿易というと新大陸のプランテーションの労働力ばかりが強調されているけれど、その時代ですら、「奴隷」という資源を売って武器や装飾品を手に入れて喜んでいたのは黒人王国の支配者であり、アラブ人商人が活躍していた。

カダフィーはコーカソイドであるべルベル人で、厳密にはアラブ人ですらないけれど、前から「アフリカの王」だと豪語していた。

もともとリビアには黒人労働者もたくさんいて、カダフィは自分の都合で何十万人も強制退去(1995年から96年にかけて)させたことも有名だった。

この1月に黒人地域の南スーダンがアラブ地域の来たスーダンからの独立を求める住民投票で98,83%という驚異的数字をはじき出したことからも、同じイスラム教であろうとなかろうとアラブ人と黒人が共栄を求めていないのがよくわかる。

今、アラブ世界で、せっかく、腐敗した軍事独裁政権を倒して自由や民主主義を求めようとしている人たちが、独裁者のカダフィよりも、目の前にいる黒人傭兵への憎しみと人種差別を混同して表現しているのは、あとを引きそうでおそろしい。

ヨーロッパ諸国は、自国でアラブ人も黒人もまとめて差別していたり、過去の奴隷貿易だの帝国主義だのの「贖罪」義務があったりという事情のせいで、この様子を見ておろおろしている感じがする。

リビアの戦闘が長引くと、その先カダフィがどんな最期を遂げようと、彼の利用した人種差別のせいで、わかいアラブ人たちの「自由」の希求が泥にまみれるのではないかと心配だ。
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by mariastella | 2011-03-09 09:38 | 雑感
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竹下節子が考えてることの断片です。サイトはhttp://www.setukotakeshita.com/
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