L'art de croire             竹下節子ブログ

核アポカリプス

日本の大震災から一週間、いろいろな方からの連絡に対応するだけでまったく仕事ができなかった。

海外にいると、日本に何かあった時に、周りから、「そう言えば私の知ってる日本人=日本人代表」のように見なされるので、最初からお悔やみの言葉をかけられたり、妙にテンションが上がっているのに応えなくてはならなかったり、けっこう大変だ。

もちろんパリ在住の日本の方も、日本にいる家族への心配の相談や、このことについて話してストレス発散する必要もあるので、私は一日何時間も似たようなことを日仏語で繰り返している。

フランスは原発に80%近くを頼っている国だから、潜在的恐怖がここまで強かったのだと今更ながら驚く。

今のこの瞬間も、ラジオなどで、「福島のこの決死隊の冷却オペレーションが失敗したらカタストロフィが待っている」などという言いまわしを平気で使っている。

私は、ある意味でカタストロフィはすでに起こってしまったので、今はその被害をより少なくできるかどうかの段階だと認識しているので、カタストロフィ映画のようなこのトーンには閉口させられる。

フランスでは35万円くらいのガイガーカウンターのネット上の注文がすごいそうで、薬局でヨード剤を買う人も多く、1980年 以来初めて核シェルター(1700万円くらい)の注文もあったそうだ。チェルノブイリの時とはウェブによる情報の量が違うから人々の反応が速い。(情報リテラシーが高まったわけではないのが問題なのはもちろんだ)

放射能汚染への過剰反応というのは、被爆国の日本にあった方が理解しやすいが、フランスのこのカタストロフィズムはいったいどこからきているんだろう。

フランス人がヨーロッパ一の精神安定剤消費国だというよく知られた事実も、今回はじめて実感をもって納得できた。

もう大分昔の生徒の親が、うちの郵便受けに、それはそれは長い、お悔やみの手紙を入れてきたりするのだ。

「同情するなら金をくれ」

などという台詞も思い出され、それなら、このフランス人のエキサイトぶりを被災者の役に立てようと、今チャリティコンサートを企画し始めているところだ。

はやくしないとリビア戦争で、日本への関心が薄れそうだからね。

リビアへの介入は昨夜ようやく国連の安保理で可決されたのだが、拒否権こそ発動しなかったがはっきりと否定的だったのは、中国、ブラジル、ロシア、ドイツなどだ。

このドイツの態度のもたらすものは重い。

サルコジのスタンド・プレイがその前のEU会議に陰を落とし、結果、EUよりも国連を優先させるという前例がEU内にはっきりとできた形だからだ。

どちらにしても、カダフィの自国民殺戮の暴走を止める希望が生まれたこと自体はよかった。

人は天災や環境破壊の前に非力であり、

戦争や憎悪や支配者の暴力の前に非力であり、

個別の事故や病気や障害や老いの前にも非力だ。

リビアはこの2番目にあたり、そこで弱者を救うために駆けつけるためには、政治やら経済やら国際法やらイデオロギーやらの欺瞞的な兼ね合いをくぐりぬけなければならない。もう何か月も内戦状態のコートジヴォワールなどは野放し状態だ。

それに対して、日本の大震災のような場合には、ロシアでも台湾でもドイツでも、フランスでも、他の国と相談したり利害関係を計算したりしないで迅速にかけつける。

天災の前には「仲間うち」の範囲が「人類」に拡大して、連帯意識が生まれ、傲慢さや駆け引きが減る。

人の傲慢さや、「自分の仲間でない」と見なすものを排斥するという負の人間性はなくなることはないだろうが、時々発露するやむにやまない連帯感や利他意識が、全体としては、次代をいい方向に押し上げてくれるように、願ってやまない。
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by mariastella | 2011-03-18 19:10 | フランス
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