L'art de croire             竹下節子ブログ

震災のことなど その後

今回の大地震の少し前に日本を発ってパリに着いた水林章さんが、ラジオのインタビューで、「世界で唯一の被爆国である日本で原発が使われているのはなぜですか」と問われて、しばし躊躇した後、「日本人が忘れっぽいからかもしれない・・」などと答えていた。

私は、日本は被爆国だから核燃料反対のロビーはしっかり存在している、とフランス人に説明していたのに・・・

今回の震災について、「日本人の冷静さ」を称賛するような口調が最初は支配的だったが、自然災害である地震と津波の他に人災の面が大きい原発事故に関心が移ってからは、論調が変わった。

ドイツなどでは初めから、

「日本人が冷静なのは情報を開示されていないからだ」

という口調だったが、フランスもだんだんと、東京にいるフランス人の報告で、

「東京の人たちは表面的には普段と同じように暮らしているが、一歩店に入ると買い占められて食品や日用品が亡くなっているから、内心ではパニックを起こしているに違いない」

という風にシフトしてきている。

それにしても、「原発=日本人は忘れっぽいから」、というのはあんまりな気がする。

フランス軍人と結婚しているタイ人のマダム・プーは私に

「日本が原発を所有しているのは科学技術力と経済力の誇示のためだけだ」

と言いきったが、そっちの方が真実に近いのだろう。

原発利権というのが莫大なものであることは想像に難くないし、原爆の被害を受けたのにかかわらず原発をつくったのではなく、自分たちも対抗して、核を含めた再軍備の可能性を何らかの形で視野に入れたからこその政策だったのだと思う。

現に岸信介が回顧録に

「原子力技術はそれ自体平和利用も兵器としての使用もともに可能である。どちらに用いるかは政策であり国家意思の問題である。日本は国家・国民の意思として原子力を兵器として利用しないことを決めているので、平和利用一本槍であるが、平和利用にせよその技術が進歩するにつれて、兵器としての可能性は自動的に高まってくる。日本は核兵器は持たないが、潜在的可能性を高めることによって、軍縮や核実験禁止問題などについて、国際の場における発言力を強めることが出来る」

と書いていることを最近読んだけれど、さもありなんと思う。

原子力は兵器であろうと発電であろうと、「力」のシンボルなのだ。

マダム・プーの友人の日本女性は、最近アフガニスタンから戻ったフランス人軍人の夫と共に、タイに移住するのだそうだ。タイには原発もないし、津波の危険地域でなければ地震もないという。タイというと軍事クーデターがあったり、反独裁民主戦線が活発だったり、それほど安全なイメージはなかったのだが、たとえ衝突してもすぐに話し合える平和的な国民だと彼女は言う。

フランスはリビア空爆が始まったので、TVのニュースも日本の震災や原発危機からリビア情勢へと大きく変わった。

それでも、放射能を含んだ空気が来週火曜か水曜にはフランスに達するとか、日本から来る野菜や果物には要注意などと言っていた。ヨーロッパで毎年消費される日本製の野菜や果物の量も言及されていたが、食料自給率が低い日本からヨーロッパに野菜や果物をそんなに輸出しているのか、と、その方に驚かされた。本当なんだろうか。

サルコジは、原発について、フランスご自慢のEPR(European Pressurized Reactor)はシェルターが二重構造だからボーイングが突っ込んでも壊れない、とUMPの会合で今回自慢したそうだ。

このEPRというのは、高価過ぎてなかなか売れないが、値段が高いのは安全性が高いからだ、らしい。もっとも、現在はプロジェクトだけだとか建造中のものばかりで、稼働中のものはない。それも2003年に「航空機が突っ込んできたら耐えられないでしょう」と関係者がはっきり答えている記録があるのに。

どういうわけか今回はイギリスとつるんでアメリカまで引っ張ってリビア介入を決議させたサルコジは今鼻息が荒く、エリゼ宮で緊急サミットをやっていた。

2003年のイラク侵攻では、当時のシラク大統領が、「安保理にかけられたらフランスは拒否権を行使する」とはっきり言明していたので、英米らは国連決議なしに戦争を開始した。

それに比べれば、今回は反対する国が棄権はしても拒否権は使わなかったからましだったとは言える。

近く七州の選挙を控えているドイツは、アフガニスタンにフランスよりも多くの兵士を出していて批判されているので賛成はできなかった。

アメリカもイラク、アフガニスタンを抱えているからリビアは乗り気でなかったもののまあ賛成した。

自国の反体制派が騒いだ時に他国に介入されると困るロシアや中国はもちろん分かりやすい。

しかし、インド、ブラジルという高度成長国が他国の「民主化」の動きに無関心を決め込む形なのはなんだか残念でもある。

ともかく、自然災害を前にした人類は多少なりとも連帯意識や謙遜を見せるというのに、人災に対しては、原発やら兵器をつくったり売ったりしている国はとたんに欺瞞的かつ傲慢なところを見せるわけで、より鬱々とさせられる。

日本の震災の情報がテレビから消えないうちになんとかチャリティ・コンサートを実現させなくては・・・

仙台出身の佐藤俊太郎さんから連絡があって、4月半ばに一つパリでやるそうだ。私の方は、住んでいる町で一つできる予定だ。あと、フランス海軍のコネで去年のハイチ支援コンサートと同じ場所を打診したらうまくいきそうだったのだけれど、リビア空爆が長引くならダメになる可能性は大きい。

もう一つ、火曜日にパリ8区からコンサート可能かどうかの返事が来ることになった。

4月の日本行きをキャンセルしたので、その代わりにフランスでできることをやろう。
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by mariastella | 2011-03-20 09:25 | 雑感
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