ほとんど一世紀に渡った公式無神論の時代を経て、モスクワ市長が、市の所有地に60の教会を建設すると発表した。
信者500人を収容できる規模のものもあるそうで、全部で200の新教会が建てられるらしい。
ロシア正教会の教会は今350残っているそうで、それでもけっこう多いと思ったが、1917年の革命前にはその5倍もの教会があったという。
驚き。
その建設費用の分担を知りたいところだ。信者の寄付、モスクワ市や国の助成がどのくらいあるのか ?
フランスでは有名な1905年の政教分離法があるのだが、当初の目的はナポレオンとローマ教会の和親条約を破棄して、国家の重荷になっていたカトリック教会への出費を軽減することだった。
第2条には共和国はいかなる宗教にも助成金(subventions)を与えないとあるが、19条には、公的な礼拝場所の損傷を修繕する費用は助成金とは見なさない、とある。
1942年にペタン元帥が私的な礼拝場所(つまり1905年以降に建設された教会)にもこれを適用することにして、1944年にドゴール将軍がそれを追認した。
今のフランスではマグレブからの移民を中心としたイスラム人口が増えているのにモスクが足りないことから、人々が町中で礼拝することについて論議が展開されているところだが、これについても、
必要な礼拝所の建設への援助は助成金とはみなさない、
と新たな条項を付け加えればいいのだと言う人もいる。
1905年法は実は少しずつ、50ヵ所も修正されてきたのだが、その方向は、概して、最初の総合的な政教「分断」を、状況に応じて緩和する方向のものだった。
ライシテ(1905年法にはこの言葉は出てこない。1958年憲法に共和国はlaïque であると確認されているだけだ)の根本理念は政教分離よりも「信教の自由」にあると言え、EUも、フランスの1905年法のその部分を共通基盤にしている。
実際は各国がそれぞれ、伝統宗教と特別な関係を持っているし、イギリスなどはイングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランドなどみな別々の法規定がある。
国の中心にシンボルとして宮中祭祀の一部を「国事」と見なす一方で、寺社との関係を養うことなく「無関心」型ライシテを営む日本のような国からはいろいろな意味で想像がつかない状況がたくさんある。
モスクワの教会建設ラッシュも、パリのモスク建設助成も、ライシテ論議も、本当は、日本にとって著しく不可解な話題なのだが、それすらもたいして意識せずにスル―してしまうところが、日本にとっていいことなのか心配なことなのか、よく分からない。
そう言えば、ロシア大使館はパリのセーヌ河岸に建設予定の正教教会の模型を発表した。金色に輝く五つのドームを戴いたものだ。
いいのか、これで ?
http://www.orthodoxie.com/2011/03/le-vainqueur-du-concours-pour-la-construction-de-la-nouvelle-%C3%A9glise-russe-%C3%A0-paris.html