L'art de croire             竹下節子ブログ

中央公論と婦人公論

送っていただいた中央公論の7月号と、前に読んだ婦人公論(4/7号)の記事の差にショックを受けた。

まず、前者に翻訳掲載されていたのは、レスター・ブラウンの「世界を震撼させる真の『食糧危機』」というワシントン・ポストの記事だ。

ある意味ではよく耳にする話である。

世界の人口がどんどん増え、増えていく中産階級が卵、肉、ミルクなどの「より高級な食物」を消費したいと願い、それまで世界中を支えていた食料生産国アメリカもついに手に負えなくなった、灌漑によって20年以上食料自給を可能にしてきた乾燥したサウジアラビアも再生不可能な地下水層をほぼ枯渇させた、など。
危機感あおり型。

で、「婦人公論井戸端会議」での川島博之さんと浅川芳裕さんの説明を聞くと、全然違う風景が見えてくる。

川島さんは、世界の食料生産は順調、今の穀物相場高騰の原因は「投機資金が食糧市場に向かったため」でほぼ100%説明できるという。サブプライムローンなどの金融商品を扱っていた投資銀行などが資金を引き上げ、金、原油の後に穀物に振り向けたからだ。原資はオバマ政権の金融緩和政策によって放出され続けてきたドルである。

レスター・ブラウンはそのことについてまったく触れていない。調べると彼はオバマ支持者だ。

一方フランスでは、アメリカの後追いをするサルコジですら、ブラウンがちらと書いているように、商品市場での投機を抑制することで食糧価格の上昇に対抗しようとG20などで提案している。

ブラウンはそれは対症療法でしかない、あくまでもエネルギーと水利と人口の問題、と言うのだが、いろいろ腑に落ちない所もある。

また、サウジアラビアの感慨は、海水を淡水化する技術開発による灌漑がメインだとサウジアラビアで聞いたことがあるし、川島さんや浅川さんも、技術の進歩で生産性は飛躍的にアップしたので世界の食糧生産は人口増加のペースを上まっているという。作り過ぎないような生産調整の方が大変だともいうのだ。

浅川さんによると、生産額を基にした食料自給率では日本はアメリカ、フランスに継ぐ世界3位だそうだ。世界最大の食糧輸入国もアメリカで、国民一人当たりで見ると、輸入額も輸入量も日本はフランスより少ないそうだ。

一方ブラウンは、裕福になりつつある中国の14億人の消費者がアメリカの消費者を相手に、アメリカの収穫穀物を争奪し始めるとすれば、アメリカの安価な食べ物の時代はもうすぐ終わるかもしれない、とか脅す。

うーん、どちらも、それなりのバイアスがかかっている気がする。

日本の食料生産量を価格ベースで比較するのも疑問だし、ビジネス視点と政治視点の差もある。

問題なのはやはり、世界規模での食糧分配の不公平が、弱者の生存権を侵しているという点ではないだろうか。

私は以前、フランスの農業政策について新潮45に記事を書いたことがあるので、考えさせられた。
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by mariastella | 2011-07-14 00:15 | 雑感
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竹下節子が考えてることの断片です。サイトはhttp://www.setukotakeshita.com/
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