L'art de croire             竹下節子ブログ

A.I.

キューブリックが考えついてスピルバーグが演出したというこの「母親に愛されたいと望む」少年アンドロイドの映画「A.I.」は、封切当時これといって私の関心を惹かなかったのだが、最近DVDで見る機会があった。

「愛されたいと望む」プログラムなんて、最低だなあ、と思った。

せめて「愛する= 相手の幸福を望む」プログラムにすればいいのに。

「愛されたいと望む」なんて、プログラムのレベルでは、破壊を望むのと同じくらい暴力的だ。

そんな明らかに発想からして破綻しているアンドロイドを、息子を失いそうになって悲しみの淵にある母親の慰めのために与えようというのだ。

猫を飼え、猫を、

と思った。

猫型精神のプログラムでもいいけれど、それをアンドロイドにする必要はない。

外見が人間だったら、この映画にあるように、子供たちから嫉妬されたり、いじめられたりするからね。

この映画の少年アンドロイドはどちらかと言えば「犬」型だ。犬は主人に忠誠を誓い愛も求めるから、絶望した人間の支えになることもあるが、主人と特別な関係を勝手に組み立てて自分の世界のヒエラルキーに組み込むから、後で主人が結婚したとか子供が生まれたとか、状況が変わると、新参者に嫉妬することもある。

それをキャッチして新参者の方がその犬を厭うこともある。

この映画でも、少年アンドロイドと、奇跡の回復をなして母親のもとに戻った人間の少年の間でも、当然そういう緊張が生まれたわけだ。

しかも、犬より悪いのは、形が人間だということの他に、アンドロイドには食事も与えなくてもよく、世話がかからないというところだ。

物質的、生活的な依存関係がない。

ある程度の「共依存」がないと、生活の場での都合よい「愛」はなかなか成り立たない。

猫は、外見がまったく人間とは違っても、美しいし、柔らかく気持ちいいし、かわいいし、でも、食べ物やトイレの始末などの世話は遠慮せず要求するし、こちらに愛させてくれる(それも向こうの機嫌次第だけれど)。

まあ、猫には、お世話させてもらって、愛撫させていただこうと努力させてもらって、自然体で美しい姿を愛でさせていただいて、などと、こちらがそういう努力を強いられることによって、逆に生きる元気を与えてもらえるわけだ。

息子が意識不明で絶望している母親に、「愛されたいと望む」プログラムのロボットを与えるなんて、設定からして完全に「間違っている」と思うので、その後の展開がいかにシンボリックで寓話的でそれなりに興味をつないでも、出発点の違和感は乗り越えられない。

やっぱり猫ですよ、猫。
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by mariastella | 2011-07-18 02:09 |
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