L'art de croire             竹下節子ブログ

末廣亭

9月の初め、久しぶりで新宿の末廣亭に行った。

いつも変わらぬ世界だが、今年は「地震の時、私と家内は・・・」などという前振りがあったのが「今年らしい」感じだった。こんな古い建物、地震が来たら大丈夫かと思うが、出口はすぐそばだから怖くはない。

ここにいると、島国共犯意識というのがひそかに共有されていて、そこはかとない差別や偏見が野放しになっている。昔モンゴル人力士の本名ばかりずらずら並べて見せて笑いをとっていた人もいたが、そこでも少し後ろめたく感じたし、外国人ばかりじゃなく女性差別やら「そこの奥さん」差別も平気で口にされる。

確かに、こういう寄席に来て楽しめる人というのは日本語能力が高くなくてはいけないから、自然と「日本人御用達」になる。

他の伝統芸能と違って、ただひたすら「言葉」だけの世界だから、外人観光客や文化研究者にも敷居が高いだろう。
日本人が何年欧米に住んでいても、政治や時事の風刺のトークショーなどになかなかついていけないのと同じだ。

それでも、こういう閉鎖空間ならではの約束事がきっちりあって、それを無視するものは排除される。

落語の途中で誰かが舞台の前を腰をかがめて横切って退場したのだが、すかさず、「これが海老蔵の舞台だったら、ファンに殺されてますよ」と高座からコメントがあった。

その少し後で、どうやら酒の入っていた人が、前列から何度か口をはさんでいるのが聞こえ、演者が「前座さん、つまみだしてください」と促し、結局その人がちょっとふらつきながら自分で出ていくまで、断固とした調子を崩さなかった。

その後で、元に話題に戻すのはなかなかつらそうで、自分でもそう言っていた。

で、残った人は、家族だけ、という雰囲気に。

でも、実は、どれもこれもあまり手放しで笑えなかった。

女性の芸というのも、なんだか痛々しいと思う。

江戸家猫八の娘さんの江戸家まねき猫の、ものまね枕草子というのも、よくできているのにちょっと物悲しい。

芸人には、多くの人がちょっと自虐的なネタを出すのに躊躇しない人が少なくないが、男性芸人なら笑えてしまうところでも、女性芸人では笑えない時がある。
他の観客はどうなのだろう。

違和感をいろいろかかえて、私はこれからも寄席に行き続けるのだろうか。
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by mariastella | 2011-09-25 00:47 | 雑感
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