L'art de croire             竹下節子ブログ

社会党予備選と原発について

15日に社会党の大統領候補選出予備選の決選投票がある。

オーブリー女史とフランソワ・オランドが水曜日にテレビ公開で意見を戦わせた。

この2人、前々書記長と前書記長だけど仲が悪いなあ。

一次予選で敗退した5年前の候補のロワイヤル女史(オランドとの間に成人した4人の子供がいる)が正式にオランド支援に回ったので、オランドは、大臣職の経験ではオーブリーに負けるし、オーブリーのような親の七光り(オーブリーはドロールの娘)もないので、オーブリーとも仲の悪いロワイヤルを味方につけたという自信たっぷりで、にやにや笑い。

彼を形容する時に使われる「臆病でゆるい(柔らかい)timide et mou」という政治に対してオーブリーが、「強い(硬い)社会党」とつっぱってみせたら、オランドは、硬いか柔らかいではなくて「堅固(solide)な政治を」、と返して見せた。

この予備選について自分は最初から信念の人、オーブリーはDSK(NYでのセックス・スキャンダルで失墜)の代役だというニュアンスもあちこちに加える話術も巧みだ。

ヒラリーとオバマの時のように、最終的にサルコジに勝つには女性候補よりオランドの方が確実というプラグマティックな流れもあるので、全体としてはオランドが今でも有利だと見られている。

今回の討論ではもうエネルギー問題は取り上げられなかった。

社会党はもともと原発国策に反対していなかった。フクシマ騒ぎとドイツやイタリアの動き、大統領選を見越した緑の党への迎合、などから、最近あわてて一応の「脱原発」を掲げてみたものの、おざなりだということは明らかである。

オーブリーは、今から30年で脱原発と言っているが、もし来年政権をとっても、社会党政権が30年も続くわけはないし、61歳の彼女自身の政治生命も、せいぜい後10年程度だろう。

オランドの方はもっとひどくて、今から2025年までにフランス電力の原発依存度を今の75%から50%に減らすと言っているだけだ。

これは、別に、原発を25%廃炉にするというわけではなく、持続可能エネルギーなどを増やすことで、原発の割合を減らすと言っているにすぎない。

つまり、今原発以外にある25%のエネルギー源を、「3倍に増やす」と言っているわけだ。

すると、全体で50%増しのエネルギー。

ますます電気を使い放題のエネルギー大国にして景気も回復、という展望である。

あり得ないだろう。

こんなふうに社会党の脱原発スタンスがいい加減なものだから、フランス原子力委員会のベルナール・ビゴ(Bernard Bigot)はフィガロ紙を通して、もっといい加減な数字を打ち出した。

「フランスが脱原発をするには7500億ユーロかかるんですよ」(だからこの緊縮財政ではムリムリ・・・)

というのだ。

で、この数字の根拠というのがインチキにもほどがある。

それは、ドイツが脱原発を決めて、持続可能エネルギー開発に向けた予算である2500億ユーロを単純に3倍した数字なのだ。

ドイツの新エネルギー開発予算を、「廃炉予算」と言い換えて、フランスにはドイツの3倍の原発があるからその3倍という計算である。

当然、原子力発電を続けていった場合の増え続ける廃棄物の処理を含めた厖大な経費との比較などない。

それなのに、なぜか、どのメディアも、そしてそれを翻訳する世界中のメディアが、この計算の仕方についてなんの検証もせずに、「7500億ユーロ」を繰り返し、まるでそれが「廃炉不可能」を正当化する唯一の現実的数字であるかのように「既成情報」になってしまった。

原発ついでにもう少し書くと、9月5日の朝日新聞に載ったらしい管前首相のインタビューにすごいことを見つけた。

http://www.asahi.com/politics/update/0905/TKY201109050628.html

「菅直人前首相は5日、東京電力福島第一原発事故について朝日新聞の単独インタビューに応じ、フランス政府から事故後、同原発の使用済み核燃料の引き取りを打診されたことを明らかにした。

 菅氏が5月に仏ドービルでのサミットに参加した際、フィヨン仏首相から提案を受けたという。菅氏は「フランスは使用済み核燃料を持って帰ってもいいよと言った。ある種のビジネスかもしれないが当然、経産省の現場には伝えた」と語った。

 日本政府が福島第一原発の事故で使用済み核燃料の処理に窮するなかで、原発大国のフランス政府がトップセールスで再処理を売り込んできた格好だ。応じれ ば日本の核燃料サイクル政策が根底から崩れかねないとして経済産業省内には反対論が強く、政府内で協議を続けているという。

 当時、東電の調査で、福島第一原発1~4号機のプールは原子炉内の燃料と違い、比較的損傷が少ないことが判明。プール内には3108体の核燃料があり、 うち使用済み核燃料は2724体。フランスの提案は、再処理技術の先進国として原発事故が起きた日本の使用済み核燃料を処理することで、技術力を世界にアピールする狙いがあったとみられる。

 日本は使用済み核燃料について、2012年に完成予定の青森県六ケ所村の再処理工場でプルトニウムを抜き出す核燃料サイクルを進める予定。フランスへの 再処理委託は終わっている。経産省内には「改めてフランスに引き取らせると再処理をあきらめることにつながる」と慎重論が強かったため、フランス政府には 返答しておらず、政府の「エネルギー・環境会議」で取り扱いを議論しているという。 」(引用終わり)

 これって、なかなか意味深長ではないだろうか。

「ある種のビジネス」だの「フランスの技術力アピール」などというが、少なくとも、フクシマの後、3ヶ月くらいは、フランス人は本気で「責任を感じていた」ふしがある。

アレヴァの社長でさえ、フランス人の反応は情緒的すぎると言っていたくらいだ。

実際、第三号炉のMOX燃料はアレヴァが売りつけたもので、事故があった時のリスクの大きさは分かっており、フランスのネット上では、アレヴァに怒りをぶつけて、アレヴァは責任をとって世界中に売りつけたMOX燃料を全部引きとれ、と訴えて署名運動を展開したフランス人までいて、それなりに盛り上がっていた。

Bonjour à tous
J’ai lancé sur le web au titre de simple citoyen un pétition pour qu’AREVA qui est complètement impliqué dans la catastrophe de Fukushima rapatrie immédiatement le combustible MOX qui contient du plutonium (7%), de toutes les centrales nucléaires de la planète ou elles en a vendu.
Vous pouvez signer cette pétition à cette adresse, :
http://www.mesopinions.com/petition-pour-le-retrait-du-combustible-mox-de-toutes-les-centrales-nucleaire-d-la-planete-petition-petitions-b2bc8d0d270a04e27179c3e9b3fa70c4.html

これは5 月の下旬であり、ドーヴィルのサミットでフィヨン首相が管首相に使用済み燃料の引き上げを申し出たのと同じ頃である。

この時期であれば、日本が強く出れば、少なくともフクシマの使用済み核燃料については、リサイクルビジネスの「発注」などではなくて、「廃棄物無料お引き取り」という形で交渉できたのではないだろうか。現に、アレヴァは4月始めに日本に配達する予定だったMOX燃料送りを同義上の理由から中止した。その時も散々非難を浴びたからだ。

それなのに、日本は、「六ケ所村での再処理を諦めることになる」ということが念頭にあって、むざむざと、2724体もの核廃棄物をさっさとひきとってもらうチャンスを逃したわけだ。

最近こういうのも読んだ。

http://eco.nikkeibp.co.jp/article/report/20110928/108520/?ST=rebuild

フクシマでは

「無電源でも一定時間原子炉を冷却できる仕組みがあったんです。1号機には炉の内側と外側の温度差で動く「隔離時復水器」が、2号機と3号機には隔離 時復水器の進化版である「原子炉隔離時冷却系」がそれぞれ設置されていました。その結果、津波で電源を喪失した後も、1号機は約8時間、2号機は約63時 間、3号機は約32時間、それぞれは冷却が続き、制御可能な状態だったと考えられます(※詳しくは日経ビジネスオンライン「見逃されている原発事故の本質」を参照)。

 いずれも稼働時間はほぼ設計通りであり、現場のエンジニアはそれが“最後の砦”だと知っていました。言い換えれば、やがて冷却が止まって原子炉が 制御不能の状態に陥るとわかっていたのです。1号機の場合は毎時25tの水を入れ続ければ熱暴走を防げますが、貯水タンク内の淡水では到底足りません。豊 富にあるのは海水だけ。もはや、海水注入以外の選択肢はなかったのです。」

という山口栄一教授の話だ。つまり、まだ冷却が可能だった時間にすぐに海水を注入しなかったのは、「いったん海水を注入すると後は廃炉しかない」という躊躇があったからだそうだ。

みんな、あんな非常時に、

「もうすぐ完成する六ヶ所村がつかえなくなる」とか

「ここが廃炉になったら困る」

などという先のことをよく考えつくなあ。

(フランスでは海沿いもあるが、ロワールなどの河沿いにも原発がある。川の水の注入だと淡水だから躊躇は少ないんだろうか。)

とにかく、核兵器のある国で、脱原発などと言っても、根本のところで無理がある。まず、核兵器廃絶、そして、核廃棄物をリサイクル燃料などではなく、本当に無害化できるのか有効利用できるのかという新技術の開発に本気で取り組んでほしい。

脱原発、脱原発と口で言っているだけでは、今までやってきたことの後始末や方向転換についての研究のモティヴェーションが下がってしまうのが怖い。

原子力工学者にとってはこれからが正念場になるのだから。
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by mariastella | 2011-10-13 22:30 | フランス
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