L'art de croire             竹下節子ブログ

インドの地震、ビルマの地震

画家の友人が遊びにきた。

会ったのが久しぶりだったので、春の日本の大震災についての話になった。

彼女は年季の入った仏教者でもあって、不安というものがあまりなく、私が地震を怖がっているのを笑った。

「地震が絶対に来ない所(パリ地方)にいる人には分からない」

と私が言うと、インドやビルマでの暮らしが長かった彼女は、自分は何度も地震に遭遇したが、どこでも周りの人はみな、たいていはむしろリラックスして経過を観察していたというのだ。

インドで彼女が暮らした場所では春と秋に地震が多かったという。

台風ではあるまいし地震が季節と連動していることなんて絶対にあり得ないと私は言ったが、彼女の経験則で、周りの人も何となく合意しているのだという。その「季節」が過ぎるとみんな、ほっとするのだそうだ。

地震が来る前には

空が一瞬暗くなる、

それから風もないのに、木々の葉がそよぎ始める。

動物たちの声が途絶える。

次に、遠くからかすかな地鳴りが聞こえてきて、

やがて揺れが感じられると、獣や鳥が狂ったように鳴きだすのだ、

と言う。

いつも、いつも、そうだったと。

確かに、かすかに牧歌的というか、少なくとも私の持っている地震のイメージとだいぶ違う。

私が生涯で体験した地震は全て東京かその近郊のもので、町中か家の中だ。

でも、彼女がたいていは自然の中にいたのだとしても、被害はないのか、と聞くと、ビルマには寺院が多いからその屋根の宝輪が簡単に落ちて転がり、それがぶつかって怪我をする人はいるので気をつけなければいけなかったと言う。

それ以外は、とにかく、地震が来たら揺れがおさまるまでは地面に伏せて寝転がるのだそうだ。

「なぜ ?」と私は聞いた。

それは、まず、揺れで転ばないため、次に地面がひび割れした時に足を挟まれたり落ちたりしないためで、でき腕も伸ばして長くなって寝ていれば、全身が落ちるようなひび割れはまずないので助かると言う。

なるほど。

私は以前に東京の防災館でシミュレーション訓練をやったことがある。舞台に夕食前のダイニングキッチンのセットがしつらえてあって、そこに登って揺れを待つ。火を消すより先に頭を守るというのが正解で、その後で火を消したりドアを開けたりするのだ。

昔、ハワイ島を観光した時に、キラウェア火山の噴火が活発になると、現地の人々が車に乗り弁当を持って見物に来る展望ポイントがあるのを見せてくれて驚いたことがある。

確かに大自然の爆発だの鳴動などというスペクタクルは、相対的に安全なところからながめる限りは「興味ある」現象だ。

だからこそ、カタストロフィ映画を観てカタルシスを得る人もいる。

「災害」は、それが人間や人間の暮らしや活動を脅かす時に「災害」となるので、人間が関わらない時には自然の「脅威」は自然の「驚異」でしかないのかもしれない。

若き日に、インドの山あいで瞑想したり絵を描いたりしていた友人。

彼女が、周りが急に暗くなり静かになったのをキャッチして、「ほら、地震が来る」と耳をすませてあたりを観察している光景を思い浮かべると、人が自分のいる環境(突発的に起こり得る自然現象も含めて)を知って共存している場所があり、そこでは、そうではない場所に比べてパニックや恐怖の敷居がずっと高いんだろうな、と考えさせられた。

ちなみにその友人は昨年はじめてルルド巡礼に行き、聖母行列の時に「生きた聖母」をはっきりと目にしたそうだ。

彼女の名はマリーといって、聖母マリアは守護聖女である。

パニックや恐怖の敷居が高いと、「生きた聖母」を見る敷居が、きっと、低くなるのかもしれない。
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by mariastella | 2011-10-21 02:09 | 雑感
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