L'art de croire             竹下節子ブログ

フランスで聞いた北朝鮮の世代交代

今朝(12/19)のラジオで(Europe1)、北朝鮮の金正日の死のニュースを聞いて驚いた。

後継者の金正恩のことを、「日本人の母」の息子とはっきり言ったからだ。

さっそく日本のwikipediaで調べると、母親は1950年、大阪の鶴橋生まれの在日朝鮮人で1961年に家族7人で北朝鮮に渡ったとあった。その父親はプロレスラーで、北朝鮮でも柔道の指導者になったらしい。

正恩の母は舞踏家になり、金正日と結婚して2人の息子を得たが、2004年にフランスで亡くなっている。正日は彼女のことを「あゆみ」と日本名で呼んでいたとか・・・

正恩はスイスのローザンヌに留学したのでフランス語は堪能、とあった。漢字を勉強しているが日本語の能力は分からない、と。

北朝鮮のことはさすがにフランス語より日本語の情報の方が信頼できるだろうと思う。

それでも気になって夕方の公営放送2chのニュースを見たら、そこでもまた「日本人の母親」と言っていた。その言葉をわざわざ付け加えるというのが、どれほど微妙なことなのかフランス人には分からないのだろう。

フランスのwikiを調べてみると、さすがにそんなことは書いていないで、母はKo Young-Heesという元ダンサーでパリ郊外Villejuifの癌研IGRで乳癌で亡くなったとだけある。

本当にわざわざフランスで治療を受けていたというなら、正恩のフランス語の人脈が関係しているのだろうか。

スイスはローザンヌではなくベルンのインタナショナルスクールGümligenにPak Cholという名で留学し、さらに公立校LiebefeldにPak Unという名で在籍し、英独仏を操るようだ、とあった。

日本語の能力ことは書いていない。
しかし11歳まで日本にいた母親には日本の人脈もあるだろうから、ひょっとして日本語も分かるかもしれない。日本語情報には、母と共に東京ディズニーランドに来たこともあるとか、拉致されてきた日本女性とコンタクトがあったような噂さえ出ていたが、どうなんだろう。

フランスの新聞はどう書いているかと思って『ル・モンド』の電子版を見てみたら、東京にいる特派員がインタビューに答えていた。さすがに「日本人の母」という言葉などは出てこない。

「日本のメディアは控えめなのでありきたりのコメントしかない」と特派員のPhilippe Mesmer氏が答えている。

「スイスで学んだのなら、世界に向けて開けているのではないか?」

と質問されて、

「金正日だって1970年代にマルトに留学して英語を学んでいる。それが政治に影響するとは思えない。」という趣旨のことも言っている。

フランスは北朝鮮と外交関係がないのだが、サルコジに派遣されたジャック・ラング(この組み合わせがまた不自然なのだが)のピョンヤン訪問の後、この9月に「協力事務所」というのが開設されている。すでに北朝鮮で活動しているフランスの複数のNGOと共にフランス文化を広めるというのが目的らしい。

北朝鮮は資源はある国だから、今後、風向きが変わった時のために、窓口を設けておこうという策かもしれない。

実際は、カリタス・コリアをはじめとするカトリック系の福祉団体の活動が最も顕著だ。ピョンヤンにはカトリック教会が三つあり、ちゃんと信者が集まっている。


そこでは共産党員だという人が、信教の自由は憲法に明記されていると話している。

韓国のカトリック教会や司教団は充実しているし、フィリピンのように植民地として宗主国の影響でキリスト教化した国と違って、昔から宣教者が活躍して迫害されつつも信教の自由を拡大してきた、アジアで最もキリスト教の盛んな国になっている。

フランスのパリ外国宣教会の影響も大きい。北朝鮮にはそういう、キリスト教やカトリックつながりの「フランス語」人脈があるのは間違いない。

在日朝鮮人だった金正恩の母親が日本ではなくて遠くフランスで癌の治療を試みた背景にも、多分そういうものがあるのだろう。

「アラブの春」は若者たちの自由への渇望によって幕を開けた。
金正恩は、まだ20代という若さだ。そんな国際派で、スイスやヨーロッパの空気も味わった人なら、最初は身動きが取れないとしても、何年か後には何かが少しずつ変わってくるという可能性もなきにしにあらずだ。

日本は、植民地問題、拉致問題、など、複雑で難しい問題を抱えているが、何か別の突破口が開けないとは限らない。

これからの若い世代が、憎しみや警戒心や攻撃欲でなく、自由や連帯や平和の希求にうながされて、世界を今よりもよくしてくれればいいのだけれど。
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by mariastella | 2011-12-20 07:15 | 雑感
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