L'art de croire             竹下節子ブログ

『魔女-その神話と現実』展

郵便ミュージアムmusée de la posteに『魔女-その神話と現実』SORCIÈRES Mythes et réalitésという展覧会を観にいった。

http://www.histoire-pour-tous.fr/tourisme/105-france-paris/3892-expo--sorcieres-mythes-et-realites-musee-de-la-poste.html

ジャンヌ・ダルクがイギリス軍から本気で魔女だと恐れられていたことについて、もう一度、キリスト教世界における魔女の位置づけをつかんでおこうと思って、その「雰囲気」に浸ろうと思ったのだ。

展示はもちろんすごくフォークリックなのだが、呪い系黒魔術のエネルギーが半端じゃないのに改めて衝撃を受けた。

太い釘を隙間なく突き立てるような強烈なオブジェは、私がフランスで実物を見たのはたいていマリ、ドゴンなどアフリカ系のもので、それらも十分迫力があって気味が悪かったが、自分の中でそういうものをいつの間にか、アフリカのプリミティヴなパワーと関連づけていたらしい。

とこが、フランスの20世紀半ばまでベリーBerry近郊に生きていた魔女マダムPの作らせた呪術用彫刻などは、ヴラマンクやピカソが見ていたら泣いて喜んだだろうと思えるくらいにすばらしいオブジェばかりだった。プリミティヴな心性やその表出はいわゆる「文明」とは関係がないのだ。

1922年のスウェーデンのサイレント映画の『Heksen』も少し見ることができて、これがしっかり特撮のあるキッチュでシュールな傑作だ。サバトで自分の尻に接吻させる悪魔は監督のBenjamin Christensenが自分で演じているそうだ。箒の乗ってぴゅんぴゅん移動する飛行はETみたいだし、グロテスクなのか剽軽なのか分からないキャラがわんさと出てくる。

まあ、結局、いわゆる魔女狩りなどは16世紀以降の話で、盛んになるのは17世紀、ファンタスムとしていじられるのはそれよりもっと後だ。だから、ジャンヌ・ダルクが火刑になった15世紀前半にはまだ魔女のプロトタイプは確立していなかった。『マクベス』に出てくる魔女のイメージ以上には、彼女らのもたらす恐怖の実態がどういうものだったかは分からない。

フランスの悪魔憑き事件で最も有名なのは17世紀のルーダンLoudunの女子修道院の集団悪魔憑きで、修道女たちではなくてグランディエという神父が火刑になったことで知られている。そのグランディエの火刑の「灰」というのが残っていて、今回展示されていた。灰をすべてセーヌに投げ捨てられたジャンヌ・ダルクのことが思い出されて、これがジャンヌのものだったら確実に聖遺物だよなあと思った。

そんなことを考えながら帰宅したら、長く会っていない知り合いから電話があって、話していたら、ふとしたはずみにその人がマダムPと同じBerryの出身だと分かった。それで、見てきたばかりの魔女展について話したら、なんと、その人の奥さんはLoudunルーダンの出身だと分かった。奥さんの先祖は、グランディエに結婚式を挙げてもらったという記録が残っているそうだ。

私は『バロックの聖女』(工作舎)の中でこのルーダンの事件について紹介したことがある。でもそれ以来、ルーダンともベリーとも縁がないのに、魔女展に行ったその日に、ベリーやルーダン出身の人やグランディエゆかりの人と話すなんて、不思議なシンクロニシティではある。
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by mariastella | 2012-02-19 06:25 | 宗教
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