L'art de croire             竹下節子ブログ

Virgen de la Caridad del Cobre

3月23日から28日までローマ教皇ベネディクト一六世(以下B16)がメキシコとキューバを訪れる。

メキシコは麻薬密売組織のナルコスと警察とが癒着や戦いを繰り返していて内戦状態に近いくらいに治安が物騒なのだが、司教が「神の停戦」を提案して、ナルコもそれを受け入れて、教皇のいる間は騒ぎを起こさないと約束したんだそうだ。

日本で天皇が地方を訪れる時は、暴力団の抗争のある地域なら警察の取締強化がなされそうだが、「おとなしくしましょう」という呼びかけや受け入れがあるのだろうか。ましてや他の国の首長とか宗教の長が来る時は・・

中世、近代を通じて少しずつキリスト教主導で停戦協定や戦時国際条約を作ってきたキリスト教文化が基本にあるところは、ある意味で分かりやすくてうらやましい。

キューバの訪問は、カトリックにとってさらにシンボリックな意味を持つ。

キューバは1959年の革命から1992年まで、公式に「無神論国家(国家のドグマは科学的無神論)」だった。教会やミッションスクールは閉鎖され、外国人宣教師は追放され、クリスマスを祝うことも禁止された(1998年に解禁)。

プロテスタントのバチスト教会だけが政府と協調路線に入って生き残り、勢力を広げた(8000人から10万人)。家庭内ではカトリック的民衆宗教が存続していた。

カトリック教会は、革命前のバチスタ独裁政権と癒着しアメリカのCIAとも関係があるとされて徹底的に弾圧されたのだ。

現在のオルテガ枢機卿も、60年代には軍の「再教育」収容所に隔離された。カストロの出身校であるイエズス会の学校は士官学校に変わった。

はっきりと風向き変わったのは、ヨハネ=パウロ二世が1998年にフィデル・カストロと会見した時以来である。カトリックは、アメリカのカトリック・ロビーを通じて、経済封鎖の解除に働きかけ、亡命してマイアミに住むキューバ人との和解を進め、キューバと自由世界を結ぶ架け橋として重要な役割を果たす。ヴァティカン太子はキューバにいるし、キューバ大使もヴァティカンに常駐している。キューバ政府に囚われている政治犯の解放にも助力した。

今回も、B16にその交渉をしてもらおうとして、慈悲の聖母の聖堂にを占拠したグループがいるくらいだ。
もっとも教皇が何かをする時はすべて水面下なので、表向きの示威行動は逆効果である。

ともかく、キューバのそのような「カトリック還り」を象徴するのが「Virgen de la Caridad del Cobre 銅の慈悲のおとめ」と呼ばれる奇跡の聖母子像の巡行である。

担がれて練り歩く黄色のマントを着た小ぶりの聖母子像は、わりと地味な透明ケースに入れられて、普通のお人形みたいだ。

一六一二年、遭難しかけた三人の漁師「うち2人がインディオ)の前で、波間に現れて救ってくれたという「銅の慈悲のおとめ」像は、アフリカ由来の民間宗教Santeríaの愛の女神Ochunと習合して、キューバの守護聖人としとなり、もともと人気があった。

2010年8月からキューバ中を巡行して人々を熱狂させた。

プロテスタントのバチスト派は聖人や聖母崇敬を認めていないので、女神と習合した聖母好きの民衆の宗教感の高揚をうまく誘導できない。

カトリックの独擅場である。

B16は、その聖像出現の400周年記念に訪れる。

昨年の8月30日にその「大聖年」がスタートした時ににも、B16は夏の別荘であるカステル・ガンドルフォからキューバ国民に熱いメッセージを送った。


フィデル・カストロと語ったヨハネ=パウロ二世は社会主義陣営の鉄のカーテンを落とした立役者だった。

B16はラウル・カストロと会見する。

もしも、Líder Máximo とも呼ばれる老雄フィデル・カストロがB16に会うなら、シンボリックな意味はますます強まるだろう。
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by mariastella | 2012-03-24 07:34 | 宗教
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