L'art de croire             竹下節子ブログ

大統領選が終わった

フランスで17年ぶりに社会党の大統領が選出された。

31年前にミッテランが初めて当選した時にバスティーユ広場はひどい雷雨におそわれて、「神が怒っている」と言い出した知り合いがいて驚いたのを今でも覚えている。

興味深いのは人民戦線のマリーヌ・ル・ペンが、反サルコジを貫いて白紙投票したことで、極右人民戦線の票を取り込もうとして移民排斥などの政策をコピーしてきたサルコジって、いったい・・・というところだ。

人民戦線の「躍進」のせいで、フランスでは極右が台頭しているんですか、とか右傾化してるんですか、というような質問を時々されるのだが、今回ル・ペンにシンパシーを感じた人と、極左メランションにシンパシーを感じた人との間には、ほとんど差のない層がいる。

過去にブッシュに尻尾を振っていたサルコジが、アメリカの不況を見てあっさりとメルケルに乗り換えるのを見て苛立った層といえるかもしれない。

実際、メルケルとサルコジが並ぶのを嫌ってオランドに投票したという人民戦線の支持者も少なくなかった。

サルコジは社会党をこきおろすために盛んにスペインを貶めたことでも際立っていた。社会党政権が7年続くと経済が破綻する、というのだ。これに傷ついたスペイン人は少なくない。

それに、極右が台頭したというより、父の後を継いだマリーヌが、少なくとも公的な場所では前よりも共和国主義やその要である政教分離を強調しているので、新しい世代からは、「新保守」くらいの軽い気持ちで支持されている部分もある。

父親の時代にあったカトリック保守主義というイメージも、マリーヌ自身が二度の離婚(最初の結婚で三人の子がいる)を経て、今の相手とは事実婚という保守カトリックのイメージでは考えられない自由奔放な生き方をしていて、年齢的にも他の候補に比べて圧倒的に若い43歳という新鮮さもあった。

彼女の長女はJehanneといって、ジャンヌ・ダルクにちなんでいるし、マリーヌという名も、本名のMarion Anne Perrineよりも聖母マリアや父親のジャン=マリーを連想させる(上の姉はル・ペンの長女らしくMarie-Carolineという)。

もっとも父親も、1987年に68歳で離婚していて1991年に72歳で、ギリシャ、フランス、オランダの血をひく四歳年下の離婚経験者と再婚しているから、さすがにフランスというか、カトリックでも離婚再婚は保守政治家の足かせとはならない
。社会党のミッテランはさすがに前の世代だから隠し子は長い間隠し子のままだったが、今度のオランドは4人の子をもうけた事実婚のロワイヤルとの関係を解消してジャーナリスト(Valérie Trierweiler :2度の離婚経験者で3人の子の母)とまた事実婚の関係にある。

5年前のロワイヤルの大統領選挙戦の時にはすでにこのジャーナリストと暮らしていたが公表していなかった。

彼女のおかげでシェイプ・アップしてイメージ・チェンジに成功したといわれている。

政治家と結婚する女性ジャーナリストは珍しくないのだが、夫が閣僚入りなどすると、報道の中立性を考えて職を去る人もいる。この人は結婚していないから大丈夫なんだろうか。3人の子を育て上げるために税金を使う気はない、経済的に自立していたい、と言っているのを、Paris Match 誌で読んだことがある。

オランドもシラクも選挙区が同じコレーズで、二人が政治的には対立する陣営にいながら、コレーズの人が、前はシラクに、今度はオランドにと、政見よりも地元性を大切にしてはしゃいでいるのも郷土色を強く残すフランスの特色かもしれない。シラクもオランドもワインが好きだから、と地元の人がうれしそうに言っていた。ワインを飲まないサルコジへのあてつけなのだろう。

今朝のラジオでは、新大統領の誕生のニュースを伝える新聞を買う人たちは、サルコジに投票した人でさえ口元がほころんでいた、と言っていた。
平和な政権交代は民主主義がよく機能している証拠で、不況の世に心機一転の気分をもたらすらしい。

実際、80%を超える投票率で、若者の姿も多く、彼らが感涙にむせんで広場に集まって歌ったり踊ったりする姿を見ていると、毎年のようにいつの間にか首相が変わっている日本などとは国柄が変わってくるだろうと思う。

フランスはいまだに「大きな物語」を共有できる国であるらしい。

けれども、この種の興奮はサッカーの勝敗などにも見られるもので、巨大な金が動く政治やスポーツに蔓延する幻想や偽善を思うと、実のところ、かなり絶望的な気分になってしまう。
[PR]
by mariastella | 2012-05-08 05:24 | フランス
<< 最近近所で観たフランス映画と日本映画 日本覚書 その2 演劇 >>



竹下節子が考えてることの断片です。サイトはhttp://www.setukotakeshita.com/
以前の記事
カテゴリ
検索
最新の記事
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧