L'art de croire             竹下節子ブログ

最近近所で観たフランス映画と日本映画


是枝裕和監督の『奇跡』を観た。

こちらでのタイトルは『I Wish. Nos voeux secrets』、つまり、ぼくらの秘密の願い事、というわけで、「miracle=奇跡」とは言わない。

欧米語だと「奇跡」というのは、願い事が叶えられるというより、こちらの期待を超えて神から一方的に与えられるものだという感覚があるから、都市伝説にのっとって願いを叫ぶというのはそれだけでは奇跡とはならない。

もちろん「奇跡を願う」といういい方はフランス語でも可能だが、奇跡の「起こり方」は、やはり「願い通り」というよりも、予測不可能な神の業に属しているのだから、この映画のタイトルが「奇跡」というのは、たとえ「子供らしい」思い込みという設定だとしても、フランス語としては違和感があり過ぎるのだ。

そういう点にまず考えさせられた。

で、話は、子供たちの一種の通過儀礼、イニシエーションものになっているのだけれど、フランスでのある評には、「現実を受け入れるという東洋的な智恵に到達する」みたいなことが書かれていた。小津マジックが働いているのだろうか。

前半は2人の兄弟の福岡と鹿児島での日常の小さなことの淡々とした積み重ねで交互に積み重ねられるのがとても「映画的」だ。後半はロードムービー風になってスピード感、非日常感が、よくできた音楽で高められる。

美男美女の両親の子供2人(実の兄弟)が全然両親に似ていないのは不自然でなかなか慣れなかったけれど。小学校の先生たちもみんな美男美女過ぎる。

それにしても、桜島の有徴性は突出している。煙を吐くこの火山を毎日目にして育った私の父は、それを、一生刻みつけていた。

先日はEtienne Chatiliez の『L'Oncle Charlesシャルルおじさん』を観た。

Eddy Mitchellは悪くないし、Alexandra Lamyは好きだし、ニュージーランドで大富豪になったフランス人とナントの近くの貧乏家族の出会いというシャティエらしいシチュエーションもおもしろそうなのに、あらゆるところで浴びせられていた酷評に違わず、猥雑で意味のないシーンの連続だ。

それでも、すごく本質的に「フランス的」なのが、日本から戻ったばかりだったせいか、かえって身にしみた。

日本に滞在中は一本だけロードショーを観た。『テルマエ・ロマエ』だ。

原作のコミックを全巻読んでいて気に入ってたからだ。最新刊ではラテン語を話す若い娘が出てきてあり得ないシチュエーションだよな、と思ったが、映画ではそれがもろに採用されて、一週間徹夜でラテン語を勉強したら古代ローマで立派に意思疎通ができるという設定になっていて、無理があり過ぎだがそれなりに「映画版」としてのストーリー展開になっていた。

映画まで見るな、マンガだけにしておけ、と忠告されていたのだが、行って後悔したということはなかった。豪華だしサービス精神にあふれていて気分転換になる。

後は、時間がなかったので、往復の飛行機内で何本もの映画を観た。

フランス映画では、見損ねていた『The Artist』。

想像通りで、モノクロ・サイレントという今となっては珍しさが目新しさに映る表現を使ったアイディアの勝利である。それ以外にはこれという驚きのない予定調和の映画だった。アメリカで受けたというわけはなんとなくわかる。

日本映画は矢口史靖監督の『ロボジー』。「ニュー潮風」というさびれた温泉旅館みたいなネーミングがおじいさんを中に入れたロボットにつけられているのが笑える。

他にもたくさん観たが、続きはまた今度。
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by mariastella | 2012-05-22 21:04 | 映画
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