L'art de croire             竹下節子ブログ

l'église Saint-Nicolas-du-Chardonnet

今、カトリック界はヴァティリーク(Vatileaks)にまつわる陰謀論で騒がしい。

先日、聖霊降臨祭の日曜、カルチエ・ラタンの真ん中にあるサン・ニコラ・デュ・シャルドネ教会église Saint-Nicolas-du-Chardonnetの中に初めて入った。

ここはもう長い間ルフェーヴル司教のカトリック教条主義派(聖ピウス10世会)が占領した形になっていて、第二次ヴァティカン公会議以前の典礼を守って古式豊かなラテン語でミサを捧げている。

極右人民戦線の大統領候補だったマリーヌ・ル・ペンも3人の子をこの教会で洗礼を受けさせた。占拠が1977年で、私は、その前にこの有名な教会(聖ニコラウスの骨から出た水とか聖ヴィクトワールの右足とか聖遺物もたくさんある)を訪れる機会を逸したまま、1988年にJP2がルフェーヴルを破門したのでなんだかますます近寄りがたくなっていた。

ところがここは、17世紀の聖ヴィンセンシオ・ア・パウロや愛徳姉妹会の最初の教区であり、ゆかりの建物も周りにたくさんある。愛徳姉妹会のシスターたちにとってはぜひ巡礼に訪れたい場所でもあるのだ。

けれども、もちろんカトリックのシスターたちは、そこに出入りしないようにと言われていた。彼女らの「制服」のせいで、明らかに所属が分かるからだ。

2009年に現教皇B16が彼らの破門を解いたので、事態は好転するかと思えたが、メンバーのナチスのガス室はなかった発言などが蒸し返されて、また緊張状態にある。

でも、先日は、日本から来ていた愛徳姉妹会のシスターが、死ぬまでにもう一度この教会に入ってみたいというので、聖霊降臨祭のミサ中のシャルドネ教会に寄ってみた。

ちょうど説教中で、しかもその声がスピーカーを通して外にまで聞こえていて、扉の前で何人かの人が聴いていた。そばには修道院グッズを売る露店が出ている。入口には肩をや足を露出した格好で来るなと注意書きが張り出してある。

おそるおそる中に入ったら、女性のほとんどがヴェールなどで頭を覆っているのが眼についた。日本のテレビで年末に見る長崎の教会で白いレースの布を被っている信者の姿とか、アンダルシアの教会で黒いヴェールのマンティーラを被っているスペイン女性たちを思い出す。フランスではめったに見かけない。これなら、ヴェールをかぶっているシスターの方が私より目立たないかも。

説教では、カトリックという言葉が頻繁に繰り返されていた。

いかに彼らが真のカトリックであり続けるために、前の教皇、今の教皇に従わないという苦渋の決断を迫られたかを切々と述べるのだ。

説教の内容が自分たちの立場の擁護だというのは、やはり、この教会内部だけの小世界というセクト性が際立つ。
1988年以来、いやここを占拠した77年以来、もう35年も、そのような自己の正当性と正統性の主張ばかりを糧にして語り続けていたのだろう。

けれども、その後で、「今の教皇は新しい可能性を我々に与えてくれるかもしれない(offriraitと条件法)」と言い始めた。

それを聞いた少し後で教会を後にしたので最後までは聞かなかったのだけれど、その言葉に彼らの素直な「希望」が込められていて、なんだかほっとした。

教会にはかなりの人が入っていて、年配者も多いが、若い世代も決して少なくない。新しい世代には新しい希望を与えるような言葉が必要だ。
それまで言葉が通じていなかった人々を劇的に結びつけたという聖霊降臨記念の日には特に。

B16は、外交センスや政治手腕などに欠けて、側近に「丸投げ」するタイプのインテリ教皇なので、いろいろな問題の渦中にいるわけだが、彼の誠実さや、すべてのキリスト者とつながりたい、すべての人を大きな意味の教会に迎え入れたいという痛切な思いは信じられる。長いスパンでみると、彼の決断の多くはよい流れに向かうと思う。

でもヴァティカンの仕組み、省庁の横のつながりがないとか、昔は世界中の司教と一対一で話していた教皇が今はグループでしか謁見しない(健康上の理由もある)とか、制度、組織としてのカトリック教会はいろんなところで齟齬をきたして、悪意や権力欲やエゴイズムが跳梁できる場になっているのだろう。

今年は第二ヴァティカン公会議の50周年でもある。

50年前の聖霊の播いた種はどう育っているのか、それがいよいよ、本当の意味での刷新につながるのか、探りたい。
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by mariastella | 2012-06-05 19:26 | 宗教
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