L'art de croire             竹下節子ブログ

ファルハディの『別離』

Asghar Farhadiの『Une séparation一つの別れ』

日本でも『別離』というタイトルで上演中らしいイラン映画の傑作。

今のイランのような特殊な状況にある国なのに家族の抱える問題は普遍的だ、というような評が日本には少なくないのだが、フランスではその特殊性というか、政治的イデオロギー的な文脈の中で評されている。

今のイランの国際状況下でのアートの表現だから、それを抜きにしては語れないのだが、日本人から見ると、もっとエキゾティックかと思っていたら中流の家庭の中が意外と日本と似ているなあ、みたいな類似点に目が行くらしい。

もちろん人間性に深く分け入ってゆく普遍性は十分にあって、なんだかベルイマンの映画を見ているような気になった。

特殊な状況(娘を国外に出して教育したいという母の願い)から出発するのに、すごく日常的で家庭的な齟齬があり、悪夢のような展開になって、真実を探るミステリー仕立てになっているので緊張感が持続してストーリーテリングもすばらしい。

想定外の危機が連鎖するのを前にして、みんなが必死にサヴァイヴァルするのだが、その戦略に、自分の理念だとか原則だとか、愛情とか誇りとかをどう折り合いをつけるのかというスリリングな話だ。

政治的にも宗教的にも社会的にもさまざまな矛盾が意識化されている世界だからこそ、それぞれの生き方の選択の苦渋も、より露わに見えてくる。


俳優がみな素晴らしい。

イランやイスラエルのアーティストたちがからめ手から今の状況にどんどん問いを投げかけ続けると、いつかいい方向にブレイク・スルーが起こるかもしれない。

ファルハディの次作は、マリオン・コティヤール主演の社会派スリラーであり、秋にフランスで撮影されるらしい。

楽しみだ。
[PR]
by mariastella | 2012-06-06 01:49 | 映画
<< ヴァティカンと情報開示 l'église Sa... >>



竹下節子が考えてることの断片です。サイトはhttp://www.setukotakeshita.com/
以前の記事
カテゴリ
検索
タグ
最新の記事
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧