L'art de croire             竹下節子ブログ

ヴァティカンと情報開示

そのカリスマ性が万人に認められていた前教皇JP2は、彼ならでの外交を展開して歴史に影響を与えたが、「不透明」な部分もたくさんあった。

当時から教理省長官だったラツィンガー(現B16)の方が、小児性愛問題、財政問題についても執拗に追及しようとしていた。
まあ、だからこそ、彼が教皇になってから敵も多く作ってしまったわけだ。

聖職者がすべて財政音痴というわけではない。フランスのサン・ドニ司教は公認会計士の資格をもっているし、経済通もたくさんいる。
しかし、カトリック教会は世界の10億人以上がかかわる巨大なマルチナショナル組織なので、アメリカでの収支とアフリカの収支とを同列にはできない。大国の一都市よりも小規模なヴァティカンの行政組織が統括できる問題ではあり得ないのだ。

面白いのは、たとえB16がそういうヴァティカンの「改革」に手をつけようとしても、彼がドイツ人であることから、

「ドイツ人による改革」=「ルターによる宗教改革」

という連想が働くので、多くのヴァティカン人が抵抗を感じる、という話である。

そんなことは思いつかなかった。もちろんヴァティカンの要人は年配者が多いので「改革」には消極的という心理も分かる。

また、ヴァティリークスで蒸し返されたヴァティカンの「秘密体質」だが、これも、時と場合とモノによりけりなので、一国の政府だとか公共事業だとかの単なる不透明性や金持ちの税金逃れなどと違って、一律にバッシングや揶揄の対象になるものではないというのも分かる。

ある人が例を挙げていたが、たとえば、アメリカのある大富豪の未亡人が亡くなる時に莫大な遺産の半分をカトリック教会に寄付したいと遺言を残したとして、その詳細の情報開示が伴えば、子孫やら弁護士やら会計者らが出てきて大騒ぎになる可能性もあるわけだ。

何につけ、秘密というより「目立たない」ことを選択する智恵というのは理解できる。

しかし、内部の腐敗だとか、小児性愛や虐待のように、弱者救済というキリスト教の根幹の真逆にある犯罪の隠匿などは絶対に許さないで粛清するというのはB16の方針でもあるし、そこを曖昧にするのは、それに比べて大した内容ではない「秘密文書流出」などと比べものにならないカトリック世界全体の危機だと思う。
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by mariastella | 2012-06-07 04:57 | 宗教
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竹下節子が考えてることの断片です。サイトはhttp://www.setukotakeshita.com/
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