L'art de croire             竹下節子ブログ

Matisse : Paires et séries マチス展

ポンピドーセンターのマチス展が終わりに近づいたのであわてて行ってきた。この間から、忙しさにまぎれてたくさんの展覧会を見逃していたのだけれど、このマチス展と、リュクサンブールでやっているチーマ・ダ・コネリアーノ展だけは絶対に見たかったのだ。

Paires et séries、つまり、「ペアと連作もの」、マチスに特有の、同じテーマで同じ大きさの絵を何度も描き直す、というか、ヴァリエーションを研究したものを合わせて展示するという面白い趣向だ。

ラフな軽いものがじっくり描き込まれるものに変化するというのは分かるのだが、じっくり描いたものが、単純化していく作業の緻密さの方がおもしろい。

今回彼の室内画を並べてみて、フランス・バロック音楽との共通点を発見した。それは、mise en scène 演出、へのこだわりということだ。何をどう並べて再構成するか、「単純さ」さえ、実は考え尽くされたものなのだ。

こんなやり方を見ていたら、この人がもし、絵をデジタル処理できる時代に生きていたらそっちに走ったのかも…とまで思ってしまった。クリック一つで、色を変えたり、いろんな試行錯誤ができる。

実は同じ階でゲルハルト・リヒターの回顧展をやっていて、この人がまた、写真に特殊効果を与えて描くというデジタル処理の先駆みたいな人で、最近は実際にレーザープリントを使った作品をコンピューターで創っているのだ。

もっとも、マチスの「連作」も、リヒターの作品も、デジタルどころかずっしりとこだわりの手触りがアナログに伝わり、画家の気配というのが濃縮なので、たとえばウォーホールの連作だとか、他の画家のパロディ風の連作などとは全く違う。

また、下の階の近代美術館の常設展の方に、マチスの彫刻の裸の背中の連作が展示されているので、それも絶対に合わせて見るべきだ。何年も間をおいてレリーフが単純化していくのを見ると、色がなく、形とうねりだけが手触りと共に伝わってくるだけに、彼が絵に求めていたものがもっとはっきりと分かってくる。

連作で今回のマチスと同じような印象を受けたのは、バルセロナのピカソ美術館で観たベラスケスの模写のシリーズである。

その印象とは、ずばり、「アフォーダンス」だった。

これについてはまた改めて書こう。
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by mariastella | 2012-06-12 08:23 | アート
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