L'art de croire             竹下節子ブログ

ロンドン・オリンピックなど

ロンドン・オリンピック、 時差が一時間しかないので、時々ニュースや中継で見ている。

でも、ニュースの度にシリアのアレッポ爆撃のシーンも報道される毎日だから、すごく複雑な気分だ。

「内戦」にはオリンピック停戦もないのか。

シリアはちゃんと選手団を派遣していて、バッシャール・アル=アサドのロゴのシャツを着て入場していたりする。

7 月30日にはロンドンのシリア大使館から高官が去った。緊張が続く。
アレッポ爆撃にはロシアの兵器が使われている。

親欧米派であるサウジアラビアやカタールからは、選考基準とは別枠で、今回初めて女性選手をオリンピックに参加させている。
これらの国の平和な「民主化」をアピールする必要が「国際社会」にあるからだろう。

こういう背景を見ていると、とても、能天気にオリンピックを楽しむ気にはなれない。

唯一楽しいと思ったのは、わずか十分ほどしか見なかった開会式のセレモニーでのシーンだ。

ジェームス・ボンドに迎えられてやってきたという形の女王陛下が入場し、グレート・ブリテンの国旗が掲揚されるために運ばれてきたシーンだった。

ビデオなどで再確認していないので覚えていないが、多分それぞれの制服を着た数人の軍人が国旗を広げて横にして持ってきたのだと思う。

ポールの下に到着して、その場でしばらく足踏みを続けていたのだが、それが全く足並みがそろっていないでばらばらだったのだ。

中国や北朝鮮とはいかなくても、フランスの革命記念日の軍事パレードでも、各種軍隊はリハーサルをして完璧な動きを見せるものだ。この開会式は国威発揚型の北京とは真逆で全体に肩の力が抜けてユーモラスで好感が持てたけれど、女王陛下の前で国旗掲揚の時に軍人があんなにばらばらでいいんだろうか。あまりの意外さに楽しくなった。

こういうところが、良くも悪くも「先進国」の余裕なのかなあとも思う。

最近『ナチを欺いた死体』(中公新社)というノンフィクションを読んだのだが、第二次大戦下のスペインがどういう状況だったのかが初めて具体的に分かって興味深かった。

一応中立だったスペインは枢軸国側とイギリスのスパイと二重スパイとが複雑に暗躍して化かし合いをしている場所だったのだ。

そして、スペイン人、イギリス人、ドイツ人は、彼ら同士、一目見ただけで分かる。

さらに、ドイツ人にはユーモアのセンスがないとか、今でも言われている類のステレオタイプの民族性が諜報活動や欺瞞作戦に応用されていて、それが単なる偏見などではなくてちゃんと機能しているのもおもしろい。

最近、私の親しい人がドイツ人と働くようになって、ドレスデンからミュンヘンに行くためにルフトハンザの昼の飛行機に乗ったら、周りはみな同じ服装で同じ髪型のドイツ人ビジネスマンばかりだった。機内の乾燥を防ぐためにパイプから突然ミストが吹きつけられたので驚倒してガス室のことを連想したが、もちろん他のドイツ人は平然としていた。

フランスにいたらヨーロッパはいろんな民族が混ざっているなあと思ってあまりステレオタイプな見方はできないが、あのようなステレオタイプは、ヨーロッパ人同士が時間をかけて互いに観察し合って築き上げてきたもので結構根拠があるのだ。

ふと、パトリス・ルコントの『ぼくの大切なともだち』にも出てくるが、ギュスターヴ・エッフェルの祖父はドイツ移民でBönickhausen.という名をフランス人が発音できないのでフランス風に名を替えたものらしいということを思い出した。もし名を変えてなかったらエッフェル塔はブニックハウゼン塔だったと。

そう言われれば、エッフェル塔のような当時最新の建築テクノロジーをものにするなんてケルト系やラテン系のフランス人らしくはないなあ、といまさら思ったりする。

私はもぐらさんの『四国四兄弟』とか県民性のマンガを時々見ているけれど、いろんなレベルで地域性というのはあるものだなあと思う。

ただし、レベルによってそれを持ち合わせていない人もいる。たとえば私には日本人らしいところとフランス人らしいところとどちらもあるが、日本で先祖代々どこかに住んでいたというような故郷がないので、県民性というのは分からない。フランスでもパリやパリ近郊にしかいないからローカルなこだわりがない。

フランスでオリンピックの報道のされ方を見るたびに、あらためて国民性の違いがはっきり感じとられるのはご愛敬であるが、自分の意識も観察できて興味深い。
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by mariastella | 2012-08-02 02:55 | 雑感
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