ある種のプロテスタントのなりふり構わぬ広報戦略と違って、カトリックというのは悪くいえば発想が古い、よくいえばゆったり鷹揚で、自派の存続よりももっとユニヴァーサルな視点を持っていると時々思っていた。
でも、歴史的にも地域的にもパイが大きいので、「カトリックの有名人」にスポットライトを当てようとすれば選択肢は無限にある。
最近目をひいたのは、ヴェニスの大司教が、イギリスの映画監督ケン・ローチに、「ロベール・ブレッソン賞」を授与したこと。
人類の連帯に注目した強い政治的社会的メッセージを内包するケン・ローチの作品群に対する評価で、教皇庁の文化・社会コミュニケーション評議会の選定によって、ヴェニス映画祭の枠外としての受賞だった。
もう一つは、レースの前に十字を切るあのジャマイカのスプリンター、ウサイン・ボルトが、2013年のヴァティカンにおける宗教の自由についての国際会議に招待されたことだ。
キューバの歌手とかセルビアの元バスケットボールのスターとかも集まるらしい。
多様な立場の人がそれぞれのリアルな立ち位置を超えた次元の何かに参加するという分かりやすいイメージは悪くない。
しかし、ローマ・カトリックが、近代西洋が育った「勝ち組」に軸足を置いているのと違って、最も古いキリスト教の揺籃の地では、今、理不尽な宗教弾圧にさらされている。
これから何回にわけて、中近東のキリスト教徒の現在について書いていこうと思っている。