18ヶ月も連続で失業者が増えているフランスだが、特に女性の失業率が高い。
その理由のひとつは、女性が男性よりも職業の有資格者が少ないからだ。
フランスは免状社会で、高等教育を受けた人の失業率は男女を問わず低い。
そして今や高等教育の場だけに限ると、その過半数を女性が占めているのだから、女性が失業しているというのは、女性の方が「教育格差」が広がっているということになる。
もう一つの女性差別に、シングルの女性の失業率が高いというのがある。
これは少し驚きだ。
日本なら独身の頃はフルタイムで働いて、結婚して家庭に入って専業主婦になるとか、妊娠出産を機に退職するとかいうイメージがある。
しかしフランスではシングル女性の方が敬遠されて、そのためにシングルの女性でも、就職を有利にしようとして結婚しているとか事実婚をしているとかの虚偽の申告をする女性も少なくないのだそうだ。
なぜかというと、カップルで暮らしている女性なら、家庭の義務が伴侶と分担できるから、労働力の柔軟性が高いというのである。
これは当然シングルマザーを想定しているからだろう。
フランスの出生率は2を超えているし、いわゆる婚外子は半数を超える。都市部の離婚率は二組にひと組だし、事実婚のカップルが別れる率を加えると、さまざまな形のシングルマザーが誕生する。シングルマザーのまま長くいる女性は少ないが、確かにシングルマザーのままでいると収入も減るし子育ての負担が増え、就業形態に融通が利かないということはあるだろう。
その点、カップルで暮していれば、夫婦であろうと事実婚であろうと、さらに子どもの実の親同士ではなかろうと、育児のノルマをカップルで分け合うというスタイルはフランスでは一般的かもしれない。
私のピアノの生徒でコンサルティング会社に勤めている40歳の女性は、来週は1週間まるまる出張だと言っていた。6歳と12歳の子供の世話や送り迎えは建設業に携わる夫がぜんぶ引き受ける。
他にも、パリに住んでいるのに地方のテレビ局のディレクターをしていて、ほとんど単身赴任状態だった二児の母親も知っているが、彼女の場合は離婚してしまった。
子供の父親が警察官で不規則勤務だったので、24時間勤務体制でベビーシッターを雇っていたからかもしれない。
離婚後、彼女はパリ勤務に戻り、二児は一週間ごとに父親と母親のアパルトマンを行き来している。
このような半々育児は今主流になりつつあって、その場合は両親が近くに住むことが義務付けられているのだ。テレビ局をやめて出版社の役付きになった彼女は、もちろん「シングル」ではなく、パイロットの新しい彼氏と楽しそうに暮らしている。