L'art de croire             竹下節子ブログ

クリスマスの馬小屋

クリスマスの月に入った。

カトリックでは待降節、「馬小屋」に生まれてくる赤ちゃんイエスを待つわくわくする季節(といっても、典礼的には終末の時に想いを馳せる二重の時間が流れる)なのに、B16(現ローマ教皇ベネディクト16世)がつい最近出した新刊『ナザレのキリストの幼年時代』には、イエスの誕生のそばには動物はいなかった、とある。

じゃあ、世界中のキリスト教国にあるクリスマスの風物詩である「馬小屋」セットはどうなるんですか。

ヴァティカンにも巨大「馬小屋」舞台が設置されるし。

こんな時期にこんなことをあっさり書くなんて、空気を読めないというか、いかにもドイツ人教皇っぽい。

ベツレヘムでの誕生説の異論は新しいことではないし、馬小屋での誕生風景は神学とも関係がないから「民間信仰」ということで問題ないのだろうけれど。

その他にも、6世紀にキリスト教のカレンダーを計算したDionysius Exiguusが計算間違いをして、イエスの誕生年は、ドイツのケプラーの計算に基づくなら紀元元年より6、7年は早いはずだとも言っている。中国の暦で計算すると4年のずれであるらしい。まあこの「ずれ」については、すでに3、4年分はこれまでにも指摘されていたので、そんなに驚かない。

降誕祭の日付の12月25日に至っては、太陽神が再生する冬至の祭の時期にあとづけで設定されたというのもよく知られているし、まあ今さら、牛だの馬だのロバだのがいてもいなくても、伝統は伝統でいいのかもしれない。釈迦涅槃像にも釈迦を囲んで嘆く動物たちの姿が欠かせないように、動物たちの無垢な視線というのは救いを求める人の心をなごませる力があるのだろう。

86歳になるB16にとって今年はひどい年だった。

側近が非公開文書をジャーナリストの手に渡していたというスキャンダルが発覚して、まあ、内容的にはそうショッキングなものはないと私は思ったけれど、その「裏切り」が前代未聞だった。

その気になればどんな貴重な手書きの文書でも簡単にコピーされたりスキャンされたりして一瞬で世界中に配信されるような時代、情報が商品になる時代、というのと、B16の中で流れている時間はまったく異質だ。

2015 年のミラノ万博にヴァティカンが公式に出展して、106番目の参加国になる(単発ではこれまでもヨハネ23世がNYの博覧会にミケランジェロのピエタ像の貸し出しを許可するなどの例があった)という決定をB16ではなくて、ミラノ大司教が主導したという話から、次の教皇候補の噂もあれこれ出始めている。ハンガリーの枢機卿やカナダの枢機卿らの名も挙がっている。

そういえば、フランスのサルコジ時代に、ハンガリーの枢機卿がハンガリー亡命貴族の父を持つサルコジにすぐに会いに来ていた記憶がある。

そういう行動力やメディア力、政治力がある人が有力候補なんだろう。カナダの枢機卿はラテン・アメリカに強いということだ。

このぶんでは、ひと頃注目されていたブラック・アフリカの枢機卿たちの出番は、まだまだ先になるに違いない。
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by mariastella | 2012-12-03 05:40 | 宗教
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