L'art de croire             竹下節子ブログ

コンクラーベは続く

12日の午後の第1回投票と13日午前の2度の投票では教皇選出に必要な3分の2の投票(77票)が集まらなかったらしく、黒い煙が出た。

のろしで合図するかのようなこのアナクロニックな手続きはカトリックでなくとも、みなの注目を集めるメディアティックな光景 だ。

以前は、枢機卿たちは食事や寝る時にも礼拝堂の建物から離れられなかったのだが、JP2の時に高齢者のことも考慮して、投票の時以外は聖マルタ宿舎で過ごすことができるようになった。

そこで働く90人ばかりの職員も外部と連絡しないことを義務付けられて宣誓している。

これらすべての違反に対する罰則は「破門」だから、そもそもこんな状況でそんなところにいる人なら決してリスクを侵さないだろう。

枢機卿たちを外部から遮断することは、昔は各国の王侯貴族からのプレッシャーを避けるのに有効だったが、今は特にメディアの影響を受けることを避けて良心の自由を守るのが第一義だと認識されている。

民主主義国家の代議士選挙でも投票所ではカーテンに仕切られたブースがあるように、選択をする時に外界から隔離されているというのは心理的に自由を保証すると思われている。

陪審員などでも原理は同じだ。

でも、どこの国でも選挙にまつわる腐敗や恫喝や操作などはなくならないが、ヴァティカンのような旧態依然とした場所で個々の内心の自由を確保するための隔離のシステムが先鋭化していくというのも逆説的でおもしろい。

枢機卿たちが礼拝堂入りする時には「聖人の連祷」を唱えながら行列して進む。

生きた時代も違えばジャンルも違うカトリックの各種聖人たちの名を唱えては、「我らのために祈りたまえ」、と神へのとりなしを繰り返し頼むのだ。

これを延々と唱えているうちに、外界ではたとえ政治的ないろいろな思惑があったり個人的野心がある人でも、礼拝堂に閉じ込められる頃には、変性意識状態というか、煩悩から自由になった状態が出来上がっているかもしれない。

しかももちろん中でも宣誓するし、祈るし、ミサも上げられるし、投票する時にもいちいち神の名を口にしなくてはならない。

多くの人は、たとえ他のところでは公共マナーの順守にアバウトな人でも、「聖域」のようなところでは襟を正したり身を慎んだりする傾向があると思う。

たとえば、公園では小さなゴミを置き去りにしても、お寺の中だとか教会の中とか、墓地の中ではそういうことができにくい。

なんとなく「罰が当たるといやだから」という刷りこみがあるのかもしれないし、清浄な雰囲気に影響されるのかもしれない。

他の人によるお供え物だのお賽銭などが目の前にあって誰も見ていなくても、そういう場所で失敬してしまう人などやはり少ないだろう。

普通の人でさえそうなのだから、ましてや、もともと宗教的な荘厳だの清浄だのへの感受性が強いだろう聖職者が、しかもコンクラーベのような特殊な機会にそういう場所にそういう状態でおかれたら、かなりの確率で「滅私奉公」精神状態が出現すると思う。

これが普通の世俗の政治家の選挙なら、たとえ立候補した時には理念や情熱に燃えていても、投票日が来る頃は、根回しに疲れ、金策に疲れ、党や事務所や応援員への気遣いに疲れ、自分の当落ばかりで頭がいっぱいになっているだろう。 

それを思うと、ヴァティカンはやはり別世界だ。そんなことを考えさせられるだけでもコンクラーベのウォッチングは楽しい。

そして、そういう別世界に、たとえほんとうに聖霊が降りてきても、全員が同じものをキャッチするとは期待せずに「3分の2の合意でOK」というのも現実的である。

今日(13日)の19時過ぎの「のろし」が楽しみだ。
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by mariastella | 2013-03-14 00:04 | 宗教
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