L'art de croire             竹下節子ブログ

新教皇フランシスコにまつわるあれこれ

本日付けの二つ目の記事。

やはり情報を欲しいという人がいるので教皇ネタをもう少し続ける。

(今TVでは教皇の着座ミサをやっているのだが、それについては20日付の記事にアップするつもり。しかし、こんなに臨場感あふれるセレモニーをTVでずっと見られるのは、地デジのおかげと、まるで映画を見ているようなクローズアップも入った撮影技術と演出のおかげだ)

日本のカトリック協議会がフランシスコとしているので多分日本語読みがフランシスコになると思うのでこれからフランシスコに統一しよう。

で、その新教皇、この前の日曜日、正午のお告げの祈りでヴァティカンに行く前に、朝のミサはローマの小さな聖アンナ教区の教会を選んで、信者の一人一人を祝福したんだそうだ。

この質素な姿勢は一貫していて、フランスでは例のごとく、「フランソワ」とよばれているから、今の大統領がフランソワ・オランドとの比較が揶揄されている。

フランソワ・オランドは、前大統領のサルコジのセレブ志向と違って、「ノーマルな大統領になるんだ」と言って、はじめはエリゼ宮に住もうとせずパリのアパルトマンにとどまったり、ベルギーに行くのに飛行機ではなく一般の国際特急に乗って見せたりした(結局その方が警備などに金がかかるのですぐに別の意味でノーマルな大統領になったが)。

共に住むヴァレリーさんとは結婚していないし、4人の子をもうけたセゴレーヌ・ロワイヤルとも結婚していなかった。

出された日のシャンゼリゼのパレードは豪雨になり眼鏡が曇った。

選挙前はダイエットしてスマートになっていたのにまた近頃太って来ている。フランスの失業率が上がり景気も回復しないので支持率は落ちるばかりだ。

で、今朝のラジオで、物まねが得意なユモリストが、オランド大統領の声色で、

「今度の教皇はなかなかいいね。名前はフランソワだし、2重顎だし、雨で眼鏡は曇るし、ノーマルだし、権力はないのに奇跡を願うし、結婚していないしね。」

と言っていたのが傑作だった。フランソワ「一世」だったらこうは行かなかったろう。

さて、あるカトリック系新聞がアルゼンチンの貧困地区を取材した記事を載せていた。

「パードレ・ホルヘ」と人々に慕われていたベルゴリオ枢機卿がいつも訪ねていた貧民地区はville Sordatiと言って、15000人の住民の過半数がボリヴィアとパラグァイの移民なのだそうだ。

道は舗装されていず、安普請の建物の合間を野良犬が残飯を求めてうろついている。

子供たちの半数は12,3歳からドラッグに手を出し、ナイフを持ち、父親たちも週末には飲んだくれている。

そこに暮らす48歳のEsther Gimenes夫人は6年前にある手術の失敗で、重体の病床にいた。

同じ病室の修道女を見舞いに来たベルゴリオ枢機卿は、すぐに彼女の方にやって来て、

「話しかけ、祝福し、長い間手を握ってくれた。まるでキリストに触られたように体中がふるえた、新しい生を与えられた、1週間後には回復していた」。

おお、「奇跡の治癒」譚だなあ。

その後のある時、枢機卿は復活祭の聖金曜日の十字架の道に参加していたが、車で来ているのかと思ったらバスだったので、この女性が枢機卿をバス停まで送っていった。

その折に自分の悩みを相談したら、枢機卿が「あなたの中にキリストがいるんだから心配することはない」と言って抱きしめてくれた、とも語っている。

別の地区で、ホセ・マリア・ディ・パオラという司祭が、2007年にHogar de Christoという青年のための麻薬更生保護施設を創った。

枢機卿は次の年の聖木曜日にやってきて12人の若者の足を洗った。

これらのことは麻薬のディーラーたちを刺激し、パオラ司祭は公然と命を狙われるようになった。

それを知った枢機卿は司教区の司祭たちにそのことを伝え、メディアにも知らせ、アルゼンチン中の人がこの施設を支援するようになったので、パオラ司祭の安全も守られたという。

枢機卿は記憶力に優れ、さまざまな困難を抱えている人の名と誕生日を覚えていた。

ブエノスアイレスから35km離れたサン・ミゲル教区に住む56歳の女性は、教区司祭だった頃のベルゴリオに結婚式を挙げてもらった。

5年後に夫が事故死し、3人の子を抱えて困った女性が職を求めてベルゴリオに相談すると、彼はまず子供たちの世話を優先しなさいといい、必要な金を渡してくれた。

その後イエズス会のサルバドール大学の事務職を斡旋してくれた。枢機卿になってからも覚えていてくれて交流が続いている。

ブエノスアイレスの二つの駅前の広場には、去年から、大テントを設置して、司祭を交替で常駐させて道行く人が司祭と話したり告解したりできる場所を作った。

人々が教会に入らなくても司祭たちが町に出ていくのだ。

これらの話はカトリック日刊紙(La Croix 2013/3/18)からピックアップしたものだ。

なかなかいい話だが、実感として想像するのは難しい。

カトリック信者が70%の国、カトリックでない人も福音派などのキリスト教系宗教と関わっている国で、貧困地区が首都の中にまであって、その中で、地味に人々に寄り添ってきた司祭がいて、その人が突然新聞の一面を飾って、あの、「ローマのパパさま」になったという。 大変な驚きだったろう。

私など、普段は、のっぺりとグローバル化している消費社会の中で日本もフランスも変わりないなと思って生活しているのだが、いざローマ教皇がどうとかとなると、その底にある宗教的感性の質と量の違いに愕然とさせられる。

日本とフランスですらそうなのだから、経済状態も20世紀後半の歴史も社会における宗教の影響もまったく異なるアルゼンチンでアルゼンチンの人が新教皇の誕生をどう感じているのかなど、ほんとうには分からないかもしれない。

でも、だからこそ、グローバリゼーションなどといっても、世界にはその成り立ちも文化も気候も人種の構成も全く異なる国がたくさんあって、その中で、多種多様な12億人もの人が同じ宗教の首長と仰いでいるのがローマ教皇なのだ…と考えていくと、その人の言行の影響力の大きさをあらためて認識させられる。
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by mariastella | 2013-03-19 18:12 | 宗教
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