L'art de croire             竹下節子ブログ

ノイズ・キャンセリング・ヘッドフォン

飛行機の中では音楽を聴いたりビデオを観たりしようとしても、かなりの音量でエンジン音がずっと響いている。そのうち慣れるものではあるが、それをカットする高性能のヘッドフォンがある。

これをつけると、他の音源とつながなくとも、人の声ははっきり聞こえるがモーター音などのノイズがぴたりと消えるのだ。

それをうちの中でつけてみると、急に真空の中で話しているような気がした。

もちろん、真空だと声は全く聞こえないのだが、まるで、真空の中で人の声だけがマンガの中の吹き出しに囲まれて運ばれてくるような感じだ。

なぜかと思うと、冷蔵庫のモーター音が消えていたからだった。その冷蔵庫の音はもともと小さくて、距離もあるし、普段は全く気にならないのだが、一度消えてみると、それがずっとなっていのだと分かる。

時計のチクタク音は消えない。

そこにネコが来たので、あることを試してみた。

まず撫でてやり、ゴロゴロとのどを鳴らし始めたのを確かめてから、ヘッドフォンをつけた。

ゴロゴロの音がピタッと、虚空に消えた。

ネコの喉を鳴らす音は、食べたり飲んだり舐めたりしながらでも続くもので、呼吸とも関係がない。一体どこでどのように鳴らしているのか分からない連続振動だ。

私は大人になってからはじめてネコを飼ったので、ゴロゴロとはどのようなものか知らなかった。最初のネコが最初に膝の上に乗ってかすかにゴロゴロ(フランス語ではronron)し始めた時にああ、これがネコが喉を鳴らすということなのかと感激した。

しかし、ヘッドフォンをしていても猫が「ニャー」と鳴けばちゃんと聞こえるのに、ゴロゴロだけがノイズ・キャンセリングにキャッチされて消えてしまうなんて、なんとなく意外だった。

キャンセルの対象となるノイズとはもっと機械的な音で、有機的なものはスルーされるのかと思っていたからだ。

確かに連続の振動音には違いないけれど、ロンロンテラピー(ゴロゴロ療法?)という名で録音したCD まで発売されるほど「癒し効果」のあるネコのゴロゴロを切って捨てるなんて、この手のデジタル機器はひょっとしてハイテクな「野暮」かもしれない。
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by mariastella | 2013-03-27 00:14 |
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竹下節子が考えてることの断片です。サイトはhttp://www.setukotakeshita.com/
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