L'art de croire             竹下節子ブログ

アメリカのカトリック神学

数年前、知り合いのフランス人の娘がアメリカで暮らしているうちに、大学の神学部に入ったと知って驚いたことがある。日曜日に教会に行くようなタイプの家族じゃないのに。

ところが、今やアメリカでは特にカトリックの神学部が大流行りなんだそうだ。(以下データはLa Vie 28 mars 2013)

アメリカはイタリアに次いで司祭の数が多く(46500)、この10年で司祭になった人の数が15%も増え、人口の24%の7700万人がカトリックの洗礼を受けている。

そこまでは、ヒスパニック人口が増えたからだろう、と推測もできるのだけれど、大学の神学部が人気とはフランスでは考えられないことだ。

フランスでも近頃は68年世代で教会離れしていた人々がリタイアして神学に興味を抱くようになったというケースはあるのだが、若い人では、神学をやるのは聖職者志望の人、のような先入観があり、大学は基本的に国立ばかりなので、カトリック大学の存在感は少ない。

で、今、アメリカはカトリック大学の創設数が世界一で、カトリック大学の学生数も世界一、神学者の数も世界一なんだそうだ。

北アメリカ神学者教会には1300人のメンバーがいる。

アメリカはどんどん「ヨーロッパ化=世俗化」しているがまだまだ90%が神を信じていて、少なく見積もっても半数は日曜日にミサに行く。(フランスは7%)

神学研究のセンターはマーケットとして成立している。

つまり、需要がある。

244のカトリック大学が神学者を教授としてどんどん雇用する。

ノートルダムやジョージタウンのような名門は特にそうだ。ここ20年は保守的なカトリック大学も増えて、フロリダのアヴェ・マリア大学には1300人の学生がいる。

宗教系でないカレッジにも神学部があり、カルチュラル・スタディやフェミニズムも扱われている。

これまで社会集団にさまざまな解釈を試みた社会学や、個人を解釈してきた心理学からキリスト教思想を解き放つというタイプの神学が注目される。

ヨーロッパの神学は教義的、モラル的、原理的な神学だが、アメリカの神学は細分化された専門分野に閉じこもらない。ウィリアム・カヴァナフ(ミネソタのセント・トーマス大学神学部教授)のように政治学や歴史学に切り込む神学者もいる。

彼は、『宗教的ヴァイオレンスの神話』(フランスとOxford出版会で同時発売)という本の中で、宗教が世界を分断し暴力の原因となるという「神話」の由来を分析している。

近代の国民国家は自らを新「宗教」として聖化するために、既成宗教に暴力装置というレッテルを貼るようになった。近代国民国家がイニシアティヴをとって遂行する戦争は、「まだ非宗教化を果たしていない社会」を解放するための自由の戦いということになる。

カヴァナフは、16世紀ヨーロッパの「宗教戦争」も丹念に分析して見せて、「宗教による暴力=宗教の違いが原因で起こる戦争」という神話がいかにして形成されていったかを解説する。その手際は見事なものだ。

その本の中で、イギリス人が最初にチベット仏教を「発見」した時に、それがカトリックに似ていることに驚いたとある。本来の仏教が、政治化し、儀礼化し、政教癒着しているさまは、カトリックが福音書の精神から離れてローマ教会のヒエラルキーを作ったのとそっくりだというのだ。そしてもちろんプロテスタントの立場からはそれを批判的に見ていたわけである。

そんな視点では考えたことがなかったので、フランスの、カトリック出身のチベット仏教帰依者たちはひょっとしてそのせいでチベット仏教とそれなりの親和性があったのかもしれないなどと想像してしまった。
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by mariastella | 2013-04-10 00:13 | 宗教
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