L'art de croire             竹下節子ブログ

クライスト著「マリオネット劇場について」

この短編エッセイについては10年前の『バロック音楽はなぜ癒すのか』(音楽之友社)でもバロック・バレーに欠かせない理論として紹介したが、最近行きつけの本屋で、これだけが小さな本になっているのを発見して嬉しくなって買った。

40ページ、80グラム、日本の文庫本くらいのサイズ。このシリーズにはいいものがたくさん出ている。この手の装丁は偉人の名句集とか聖典の言葉とかにはよく見かけるのだけれど、一続きの内容のつまっているものを何度も読むのに最適だ。

ウェブの世界でかなりの古典がダウンロードできてしまうことには利用する度に感動を覚えるが、好みの書店に入って紙の本がぎっしり並んでいたり積み上げらたりしているのを見ると「感動」でなく「歓喜」を覚えるのは私だけではないだろう。

さて、このクライストのテキスト、久しぶりに読み返してみても、本当に奥深いものだ。ダンスだけでなく、楽器の演奏にも応用できる。生き方そのものにも応用できる。

ネット上で読んだフランス人の読者の感想に、「ドイツでしか現れないような忌まわしいテキスト」とあったので驚いてなぜかと続きを読むと、人形遣いという言葉が「 Führer」とあるのだそうで、つまりヒトラーの呼称と同じだから、テキストの伝えたいのは「人は自分の意思を捨てて人形遣いの手に操られるのがいい」、ことだと解釈しているのだった。

これはいくらなんでも誤読だろう。

しかし、このような名テキストにこのような誤読が可能であるのだとしたら、読者の意識にかかっているバイアスとは恐ろしいものだ。

どんな名文もどんな名曲も、受け手にリテラシーがなければ、泡沫作品と変わらないのだ。

昨日のクリスティーヌのクラスで、シャコンヌは過去に一拍157くらいで踊られていた、という記事を紹介された。
以前セシリアのクラスでも120-157とあった。
でも16分音符が連続するようなデュフリィのシャコンヌ(これは踊るために作曲されたものではないが)はクラヴサンでも128がせいぜいだし、ギターだと115くらいが限界だ。

というより、これより速いと、ステップにヘミオラを駆使して間のびさせないと踊る方が疲れてしまう。

17世紀の後半にほんとうに157のテンポでで演奏され、踊られていたのだとしたら、それこそクライストの言うように、重力の作用と反作用の反復にだけ魂を乗せて聖霊にあやつられて弾いたり踊ったりしていたのかもしれない。
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by mariastella | 2013-06-25 22:47 | 踊り
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