L'art de croire             竹下節子ブログ

サルデーニャのサン・ロレンツォ教会のことなど

前の記事で、パリのユニークなセント・セシル教会について書いたので、そのつながりで、最近見たあまりにも斬新で、最初はぎょっとしてどこかのカルトの神殿かと思った教会を紹介しよう。

といっても、適当な画像がネット上に見つからない。

Portorotondo La Chiesa de San Lorenzo で画像検索してもぴったりのものがないのだが、雰囲気は分かると思う。

7月に招待されて訪れたサルデーニャ島のポルト・ロトンドにあるサン・ロレンツォ教会だ。

まるで現代美術の野外展みたいな教会だ。

突然、燃える日輪のようなものだけが中央にある四角い正面が迫ってくるので一瞬「太陽寺院」などのカルト宗教の本部かと驚いた。

これが教会、しかも普通のカトリック教会だなんて。

十字架はないのか。

裏側に、運河から見上げるような階段の上にサルデーニャ御影石のオブジェがあって正面からだと十字架に見える。横からだと丸い。

よく見ると日輪の炎も歴代ローマの法王の横顔の連なりになっている。

正面扉の前の床の半月形のカラフルな敷石にも同じプロフィールの輪郭が見られる。天井も鐘楼も扉も、すべてに「意匠」が凝縮しているが、素朴な遊びの精神も感じられて、はじめはぎょっとしたが、細部にはわくわくさせられた。

特に天井の木の細工はすばらしい。

サルデーニャの教会は伝統的なものも、船底を水底から見上げたような木の天井に地元の御影石の柱廊という組み合わせがスタンダードでそのマチエールのコントラストが生き生きしている。11世紀から12世紀に建てられたオルビアのカテドラルにはおそらくバロック時代の印象的な聖母像があった。

「意匠」と言えば、このポルト・ロトンドという町自体が、50年前に兄弟アーティストによって細部まで設計されていて教会もその一部なのだ。舗道も広場も、同じ感性で意匠が凝らしてあるので統一性がある。

アガー・ハーンがエメラルド海岸(Costa Smeralda)を開発して、ポルト・ロトンドはその中心として「サルデーニャのニース」を目指して人工的に造られたのだ。

港には大富豪たちのヨットがひしめいている。

すぐそばには地中海が広がり山も見える。

自然の中に突然現代アートが広がるという感じは瀬戸内海の直島での驚きに似ていなくもない。

そう、いくらコート・ダジュールを目指した、ニースを真似たといっても、はっきりいって全体の鄙びた感じはいなめないからだ。地形の起伏も激しく大岩奇岩があちこちに露出している。

でも、直島はローカルなところに世界中からアートを集めたという感じだけれどこの町は兄弟の頭からすべてが生み出されただけあって親近感のようなものがにじみ出ている。

サルデーニャ全体はずっと大きいし、フェニキア人のものなのか、古代の水の女神の聖地も残っていて、ショッピング・モールの隣に突然遺跡が広がっていたりする。私が訪れたのはPozzo Sacroで、階段を下りると藻の浮かぶ透明な「聖水」に触れることもできるが、それを囲む祭場のようなところにも至るところから水がしみ出して泥状になっているところもある。周りには色とりどりのブーゲンビリアの花がびっしりと咲いていた。

サルデーニャのコルク細工に買い手の名前を入れてくれて絵を書いてくれるEdoardoさんと話した。

地中海人に見えない。

聞くとお母さんが島の人だが、父は「大陸」の人間で、しかも父方の祖母はドイツ人なのだそうだ。祖父が海軍士官だったそうだ。ドイツとイタリアは同盟して戦っていたからそういう出会いもあったわけである。

おばあさんは、みんなから「プロシアーナ」と呼ばれていたそうだ。このことを話す時、「あなたを信用して打ち明けるが…」と言ったのがなんだかほほえましかった。

エドアルドさんの両親は離婚し、彼はマルセイユにいたおじのところに渡り、後にシャンパーニュ地方でも働いた。モロッコ産のコルク製品を扱ってから、故郷に帰ってサルデーニャのコルクの質の高さに驚いたと言う。そんなわけでフランス語を話せるのが嬉しいらしくて、いろいろなお土産をもらってしまった。

フランス人は隣のコルシカ島に行くからサルデーニャの観光客は意外に少ないらしいのだ。

目と鼻の先の二つの島だが、コルシカ島からは大陸の「皇帝」になってしまったナポレオンが生まれているのだから、二つの島のフランス度とイタリア度は今となってはだいぶ隔たってしまったというのがおもしろい。
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by mariastella | 2013-08-05 02:45 | 雑感
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