L'art de croire             竹下節子ブログ

ラマダンがもうすぐ終わる。

8月7日か8日にようやくイスラム教のラマダンが終わる。

パリにはトルコのケバブ・レストランやアルジェリアのクスクスなどのレストランなどがたくさんあるが、日中閉めているところもあるし、開いているところも、何しろこの暑さなのに店の人は基本的に水も飲めないのだから客になるのがなんとなく気が引ける。

フランスで生まれた移民二世や三世にはラマダンを無視する人も少なくない。それでもまあ割合からすれば、カトリックの復活祭前の40日間の斎日や金曜日の肉食禁止を守る人よりは多い。

というか、すでに今のカトリックでは、肉食を避けて軽い食事のみという義務は復活祭のはじめの「灰の水曜日」と終りの「聖金曜日」の2日間しかない。それも、洗礼を受けている人の1割くらいしか日曜のミサに出ない国だからインパクトがない。
 
サウジアラビアのような国ではラマダン期間の日中、レストランは完全に閉まるし、旅行者の泊まるホテルでもルーム・サービスのみになる。ムスリムでなくともともかく公の場所で飲み食いはできない。

フランスと関係が深く(旧植民地や旧保護領)移民の数も多いアルジェリア、チュニジア、モロッコのマグレブ三国では、「アラブの春」もあったことだし、今はどうなっているのだろう。
 
アラブの春を経た国は今やどこでも独裁者に代わって出てきたイスラム勢力の台頭に抗議している始末だが、それが近頃とみに先鋭化しているように見えるのは、ラマダンの期間だからもしれない。

チュニジアでは宗教担当大臣らがラマダンの断食をしない人々を批判したので、彼らは「ラマダン中に撮った写真」というFacebookのページを立ち上げて、日中に飲み食いしている写真を公開して13000人がアクセスしたそうだ。ミリアム・カウイというブロガーは日中開いているカフェやレストランの場所を各自がグーグル・マップにはりつけるための情報地図を作った。

チュニジアには、ラマダンを遵守しない人を罰する法律はない。独立の父である初代大統領は1960年代初頭に、国の建設が宗教の義務に優先することを身をもって示すために、ラマダン中にTV画面に向かってオレンジジュースを飲んで見せたそうだ。チュニジアでラマダン破りを公にしている人には「無神論者」やキリスト教徒も含まれている。

モロッコでは個人の権利を守る団体が2009年にすでにラマダン中にカサブランカの近くの森でのピクニックを組織して、何人かが警察に逮捕され釈放されたことがあって大騒ぎになった。

モロッコの刑法(222)ではムスリムであるのに正当な理由なく公共の場所で隠れずに断食を破る者に6ヶ月の禁固が課せられている。無神論者、無宗教者、異教徒は罰せられないはずなのだ。

アルジェリアでは、断食を強制する法律はないが、飲み食いしたり喫煙したりする現行犯は定期的に逮捕されている。刑法(144 bis 2)には、予言者らを攻撃する者やイスラムの教義や戒律を貶める者を対象とする3年から5年の刑が明記されている。

どこでも少しずつニュアンスが違うことが分かる。

フランスでは公共の場所での宗教の服装規定を制限する法律もあるのだが、「飲み食いしない」という行為自体が挑発的だと見なされないのは当然だ。
パリはけっこう緯度が高い上にサマータイムが太陽と2時間ずれているので7月の日中断食時間は朝6時過ぎから午後10時近くまでと長いのでつらい。ドイツのトルコ人移民やスウェーデンのイラク人やアフガニスタン人移民などもっと大変だろう。

日本にいるムスリムも暑い季節には外で働いたりすると脱水症状を起こす危険がありそうだ。

日本でも一昔前までは季節ごとの行事における食習慣がけっこう共有されていたし、精進料理も広く受け入れられているけれど、基本的には節操がないほどに雑食で、食事時間もよく言えば幅が広いし、悪く言えば家庭内ですらばらばらのところが多い。分煙や禁煙も徹底していないし夜に酔っ払いを見かけることも少なくない。

ムスリムが一斉に断食することで生まれる連帯感を称揚する人もいるが、ひと月もの間、宗教的な理由で部分断食を強制されるなど私には想像もつかない。

日が暮れてからの毎夜の宴会(酒は飲めない)の楽しさを語る人もいるが、そのために空腹に耐えながら1日中大量の食事を用意しなくてはならないのはいつも女たちであることを思うとそれも耐えられない。

今年は夏休みの始まりがラマダンと重なったせいか、異常な暑さと共に、やけに長く感じられた。

食欲が落ちて、ついつい「断食健康法」などをネットでリサーチしてしまったのはどこの誰だろう…
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by mariastella | 2013-08-06 09:17 | 雑感
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竹下節子が考えてることの断片です。サイトはhttp://www.setukotakeshita.com/
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