L'art de croire             竹下節子ブログ

リシュリューの猫 その4

猫マニアのことはfélinomaneとよぶ。

一代で王家をしのぐ資産を築いたリシュリューもフェリノマーヌだった。

リシュリューは私財を投じてソルボンヌの立派な聖堂を造らせたし、アカデミー・フランセーズの基礎も築いた。

アカデミー・フランセーズは今でもフランスで一番権威のある学者組織であり、フランス語学士院でもある。

空席ができた時にだけ新入会員が選ばれる。その挨拶は時代がかっていて厳粛なものだ。

でもその厳粛な席に猫が迷い込んだら…

リシュリューの猫の名にPerruque とRacan がある。

ペリュック(鬘という意味)ちゃんは、アカデミー・フランセーズの名士の鬘から落ちた雌猫だそうだ。

当時の王侯貴族や公人がくるくる巻き毛の長い鬘をつけていたのはよく知られている。
けれどもリシュリューはカトリックの枢機卿の称号を持っていたので赤い枢機卿の帽子をかぶっているから、大仰な鬘などつける必要はなかった。

この猫のエピソードを読んだ時、厳粛なアカデミーの席で、リシュリューの愛猫がアカデミー会員の頭に上ってその鬘を落としてしまったのかと思った。

でも、落ちたのは猫らしい。

周りにいたみなが一瞬鬘が落ちたと思ってあせったのだろうか。
その猫はどこから来たのだろう。

ともかくその猫はペリュック(カツラ)ちゃんと名付けられた。

で、雄猫のラカンくんとは、件のアカデミー会員のラカン侯爵の名をいただいたのである。

詩人のラカンさんはリシュリューより4歳年下で、リシュリューの指揮のもとにプロテスタントのラ・ロッシェルを攻めた戦争にも参加している。
成立したばかりのアカデミー・フランセーズの30番目の席(今でも定員は40名)を与えられたのは36歳の時だ。肖像画を見ると鬘も頭頂部が薄い感じで、ユーモアのセンスにあふれた顔には見えない。

でも夢見がちの人だったというエピソードも伝えられている。

鬘に猫が乗っているのに気がつかなかったのか、巻き毛の鬘になら猫は絡まってぶら下がるのではないか、そもそも猫は「落ちる」のか、飛び降りるのではないか、などという疑問が渦巻く。
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by mariastella | 2013-08-17 06:51 |
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