L'art de croire             竹下節子ブログ

パオロ・ウッチェロの描くドラゴンとプリンセスの不思議な関係

15世紀フィレンツェ生まれの画家で、遠近法で有名なパオロ・ウッチェロに『聖ゲオルギウスの竜退治』(ロンドン/ナショナル・ギャラリー所蔵)というのがある。

これが妙と言えば妙な絵で、ドラゴンに捕らわれているはずのプリンセスがまるでドラゴンをペットみたいにつないでいるように見える。

「ドラゴンに繋がれている」という解説もあるのだけれど、ともかくヒーローが自分を助けに来てくれた感動的シーンで激しい攻撃がなされている最中なのにプリンセスには全く動じた気配がない。

せいぜい「あらあら」という感じだ。

ドラゴンはなかなかの迫力で描かれている。

ウッチェロの画力からしてもどんなにスリリングな光景でも描こうとしたら描けたはずだ。

実際、「聖ジョージとドラゴン」あたりで画像検索したらたくさんの絵が出てくると思うがどれもなかなかドラマティックだ。(一番の変わり種はこれだと思う。)

ともかく、ウッチェロの絵は、構図も色の配分もすごくよくできているのだが、背景の洞窟はからっぽのようだし、地面も不思議な草の生え方だし、ゲオルギウスの頭上の渦巻く雲と言い、ドラゴンの翼の三つの丸い模様があることと言い、すべてが暗号めいている。

ドラゴンが死んだのにプリンセスは鎖を離さないので、ゲルギウスがドラゴンの代わりになって、次に自分を殺して鎖に繋がれる勇士を待つのだと解説する人もいる(Eric Dayre)。

 というか、もし、この人がこう断言していなかったら、実作を見たことがない上に目の悪い私にはとても「プリンセスがドラゴンをつないでいる」、なんてことは言う勇気がない。この人はこの聖ゲルギウスがキリスト教の歴史に対する一つの冒涜とまで言っているユニークな人なのだ。

彼の説には私には腑に落ちない部分もあるのだけれど、まるで「貴婦人と一角獣」みたいなこのプリンセスとドラゴンの不思議な関係の謎が解けない限り、どう対応していいか分からない。
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by mariastella | 2013-10-14 06:17 | アート
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竹下節子が考えてることの断片です。サイトはhttp://www.setukotakeshita.com/
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