L'art de croire             竹下節子ブログ

共産主義国家の言い分とネオリベの言い分

冷戦終結の前にソ連の指導層たちが言っていたことと、冷戦終結後のなりふりかまわぬネオリベの資本主義者の指導者が言っていることは、方向は違うものの驚くほど似ている。

そのことについてジャーナリストのJean-Claude Guillebaudが書いていること(La Vie 3567)がおもしろかったので、忘れぬうちにまとめておく。

今の新教皇フランシスコは、カトリックであってもなくても、キリスト教圏の人々からは大そう人気を博しているのだが、そのことを、英国のロイター通信が「教皇はエッフェル塔と同じくらいの訪問客を集めている」と評した。つまり、ローマに来る観光客を含めて教皇の元へとやってくるアメリカ大陸からの人々などによる経済効果を語っているわけだ。

一方、スターリンは、「ローマ法王だって? 何個師団を持っているのかね?」という言葉を残した。

つまり、どちらも、数字でしかものを評価しようとしない、いや、霊的な視線で見る可能性など知ろうともしないわけである。

共産主義者とネオリベ経済人はイデオロギー上のライバルであったが、宗教や霊性に関しての盲目ぶりはそっくりだということだ。

むしろ、ベルリンの壁崩壊後、ネオリベ経済人はマルクス主義者の教義へのおかしなこだわり方ばかり借用するようになった。

政治経済現象を数学で検証すればいわゆるEMH効率的市場仮説(Efficient Market Hypothesis)が合理的であり批判の余地がないと断言したのは旧ソ連の「科学社会主義」理論の再現のようなものだ。

実際の経済は主観的で倫理的でもある選択されたひとつのプロジェクトに適合する手段を使い尽くして行くことで成り立っている。科学合理主義とは相いれない。

そういえば、グローバリゼーションが歴史の進行方向だと強調するのも、マルクス主義者が信じさせようとした歴史の必然に似ている。

どちらも、やがて世界中が繁栄するかのように約束しているのだ。

もちろんその「輝かしい未来」のためには思い切った革命だの改革だのが必要で、「痛みのある犠牲を払わなくてはならない」とするのも同じだ。

そして、共産主義が約束する理想の未来のためにつらい現在を耐えなくてはいけないのは「一般大衆」だった。しかしその未来はどんどん遠のいていく。

現在のネオリベ社会でも、一般大衆の生き難さは、公庫が赤字から回復するという名の「幸福」を買うために払われる必然の犠牲だ

共産圏諸国での中央集権経済がうまくいっていないことに対する言い訳は、経済がまだ充分に「共産」化していないからだということだった。

同じように、今のリベラル経済が破綻したり不公平を生んだりしていることに対する言いわけも、「民営化」だの「規制緩和」が充分に進んでいないからだということになる。

そして、多くの人々の可処分所得が減っていく時に、少数の大金持ちが富を独占するという構図も同じである。

うーん。

今の中国なんかはどうなんだろう。なんだかもう「言いわけ」してつじつまを合わせたり「歴史の方向」などという言葉を弄したりする努力も必要とされていないような気さえする。

たとえばどこかに自給自足している小さな村があるとしたら、そこの「経済成長」はゼロだ。将来の繁栄という言葉もないだろう。でも人々の幸福のビジョンは全然別のところにあるかもしれない。

ひょっとして「いつかは万人が繁栄」、などという幻想を掲げる必要はどこにもないのかもしれない。
とりあえず、今ある不公平を平和的手段によってきっちり批判してその解消の方法を探るという地道なやり方を手離さないというのが大切なのだろう。

で、今のロシアというと、2013年のロシアは外交的にうまく立ち回った。シリア介入のアメリカにストップをかけ、化学兵器の撤廃にすり替え、スノードンはかくまう、ウクライナには気前良くしてヨーロッパから遠ざける、ソチ・オリンピックに向けて厳戒態勢を敷く一方でプッシー・ライオットだの目立つ政治犯を釈放、そのプーチンのキャンペーンは、「恋人」というキャラを打ち出したことで他のどんな独裁者とも違う。

キャンペーン・ビデオの中で、精神科医の長椅子の上で「初めての投票は処女を捧げるようなもの」という若い美女に医者が、「そう、大切なのは、選択を間違えないことです。それは…ウラジミール・プーチン」などと言うのが出てくる。男の多くがウォッカをがぶ飲みして早死にするような国で、一滴のアルコールも口にしない、鍛え抜かれた肉体をあちこちに見せつける。酒を飲まないことはサルコジにも通じる。

今フランスではオランド大統領が女優のアパルトマンにスクーターで乗り付けて一夜を過ごしたことをすっぱ抜かれて、同棲中のヴァレリーさんがショックで入院するなどというフランスならあり得るスキャンダルの真っ最中だが、オランドにセックス・アピールがあると思う人はめったにいないだろう。

プーチンは実際にロシア女性に人気があるのだそうだ。

リンク先の三つめのビデオではふたりの美女が「私はプーチンみたいな男がいいわ、強くて、酒を飲まなくて、私にどならず、逃げない男」などと歌っている。

社会主義国家の政策がどうやって破綻したのかを学んだ今のロシアはネオリベよりもうまく立ち回っているのかもしれない。なんだか恐ろしい。
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by mariastella | 2014-01-15 00:03 | 雑感
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