教皇フランシスコは就任1年あまりで、6人も、規定外特進の聖人認定をした。
ふつうカトリックの列聖システムというのは、その徳を認められて崇敬される尊者に取り次ぎを祈った時に「奇跡が得られ」と認められてからはじめて福者となり、福者となってから聖人に「格上げ」するためにはさらに別の「新たな奇跡」の認定が条件となっている。
つまり、聖人は「過去の人」に与えられる生前の行賞などではなくて、死後に神の懐に入ってから、生きている人の願いを取り次ぐ「現役の活躍」を求められているわけである。
しかしたまにそれをしなくても、教皇の一存で、福者を聖人に格上げしてしまうケースが存在する。
実際に民衆から聖人として崇敬されている実績がある時のほか、いろいろな教育的配慮、時事的配慮がある。
前教皇ベネディクト16世は8年の治世の間にただ一人だけをこのような例外措置として聖別した。
ビンゲンの聖女ヒルデガルトだ。
その前のヨハネ=パウロ2世は27年近い治世で3人だ。
彼は列聖に必要な奇跡をそれまでの3件から1件に減らすなどして列聖そのものの基準を緩和して多くの福者や聖人を送り出したが、教皇特権による奇跡なしの例外措置は少なかったわけだ。
フランシスコを超える数の例外措置の特権を在位中に発動したのはレオ13世だけだが四半世紀をかけてのことだった。
フランソシスコの教皇特権によって聖人に格上げされた(つまり典礼カレンダーに追加された)6人は
2013/10/9 にアンジェラ・ド・フォリノ、
12/17のイエズス会士ピエール・ファーヴル、
4/2にイエズス会のホセ・デ・アンシータ(16世紀ブラジルの宣教師)、
マリー・ギヤール(マリー・ド・ランカルナシオン、受肉のマリーという名で知られる神秘家)、そしてフランソワ・ド・モンモランシ―=ラヴァル(司教)の3人、
最後が
4/27にヨハネ=パウロ2世と共に列聖されるヨハネ23世である。
フランシスコ教皇は自分のことを「ローマ司教」と呼ぶのが好きで、教皇に選ばれた時に、「よかった、これで私は枢機卿からただの司教に格下された」と喜んだというエピソードがあるのだが、この特権発動ぶりはなかなかの「教皇」ぶりだと揶揄する人もいる。
しかし「福者」と違って、「聖人」というのは「教会の無謬性」を保障されて成り立つ称号だ。しかるべき手続きは慎重に設定されている。
それを飛ばして聖人を認定してしまうことは、神の取次者としての他の聖人の「効き目」を結果的に薄めることになるのではないかと懸念する声もあるそうだ。
2014年1月には聖人認定申請をする教区が必要とする経費を教皇が軽減したので、修道会の後ろ盾のないような聖人候補の「民主化」も実現しそうで、それはフランシスコ教皇らしいと言えないことはない。(La Vie 2014/3/27)