L'art de croire             竹下節子ブログ

ゴッドファーザーがおおあわて?

就任以来、八面六臂の活躍のフランシスコ教皇(近頃は体調不良で病院慰問のキャンセルなどが重なり心配だけれど)は、貧困との戦いや環境問題や平和への呼びかけばかりでなくヴァティカン銀行をはじめとするヴァティカン内部の改革(財政監査のイタリア人4人から1人にしてスイス人、アメリカ人、シンガポール人を入れるなどイタリア離れも推進)にも本格的に手をつけ、まさに「聖域なき改革」という勢いだ。

いや、ヴァティカンは文字通り全部聖域って感じなのでしゃれにもならないが、そういうところこそ腐敗していくのが世の常かもしれない。

で、その改革にはマフィアとの癒着の粛清や戦いもある。これまでの教皇もたとえばファルコーネ判事を殺害したシチリア・マフィアをヨハネ=パウロ二世が非難してラテラノ教会を含むテロを仕掛けられたし、ベネディクト16世も殺害されたパレルモの司祭を列福しているし、非イタリア人教皇になってからは特にマフィアとの関係は緊迫していた。

で、あの「聖域なき」フランシスコ教皇なので、6/21に、カラブリアでマフィアの犠牲者を追悼し、

「ンドランゲッタ(カラブリア州のマフィア)は悪を崇拝し共通善を侮っている。マフィアは神との交わりの状態にない、だから聖体を拝領させない」とあっさり破門してしまった。

それを受けて7/6の日曜に、ラリーノ刑務所では200人の服役者が「聖体を拝受できないのなら意味がない」と司教の司式したミサの出席を拒否した。

7/2にカラブリアで聖母子像の行列があったとき、輿を担いでいたマフィアたちはわざわざ遠回りをしてマフィアのドンの家の前を通ってマドンナ像を傾けて礼をさせてみせたそうだ。82歳のドンは終身刑の確定犯だが健康上の理由で自宅監禁になっているのだ。

で、ついに、今回は、マフィアのゴッドファーザーたちに10年間、洗礼や堅信礼の儀式に出席禁止という処置を決める話が出ているらしい。

私はここのところに反応した。

キリスト教と縁の薄い平均的日本人にとっては、いわゆる洗礼親、代父、代母などという言葉は映画『ゴッドファーザー』を通して知るものかもしれない。確かに、マフィアの親分が、子分たちの子供が生まれたら名付け親になり親代わりになるというシーンは映画を通してなじみがある。

しかし、それは、当然だけれど、カトリック教会の秘跡のひとつだ。つまり神によって祝福されたというか、聖霊によって結ばれた関係だという側面は実感していなかった。

日本のやくざなら、これも東映のやくざ映画でしか知らないけれど、親分子分や兄弟分になる儀式は、せいぜい互いの血を少したらした酒の盃を腕を交差させて飲む、というシーンしか思い浮かばない。仏教とか神道とか既成の宗教のプロや典礼を利用しているという感じではない。

それが、マフィアの擬制家族関係は、ある意味で血よりも濃い洗礼の聖水や堅信礼の聖油によって、担保されているのだった。そのシンボリックな意味が彼らにとって大切だからこそ、カトリック教会が10年間の出入り禁止で対抗することに意味があると考えているわけだ。

マフィアはカトリック教会と、いったいどのくらい長い間癒着してきたのか、あるいは利用してきたのか、あるいはすっかり「マイ神様」「マイ教会」「マイ・マドンナ」化してきたのか、まさか、教会から出入り禁止などとは露ほども思っていなかっただろう。

やくざとかマフィアとかの暴力組織は、義理や忠誠はもちろんだが迷信深いというか験を担ぐというか、「聖域」っぽいところやものと親和性がある。キリスト教のメッセージなどとは関係なく、別の意味で、つまり、神やマドンナの加護を願うという意味で、彼らは本気で「信心深い」のかもしれない。

20世紀にマフィアをイタリア本土からシチリアに追いやって制圧したムッソリーニが当時のローマ教皇をヴァティカンに閉じ込めた独裁者でもあったことなどもつい思い出してしまった。

フランシスコ教皇は人々と気軽に交流するせいで警護しにくい人物として知られている。

大丈夫かなあ。
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by mariastella | 2014-08-02 02:19 | 宗教
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