L'art de croire             竹下節子ブログ

ようやく2度の日本行きから頭をリセットできた

何十年も日仏を往復しているけれど2週間のインターバルで2度日本に帰ったのは今回がはじめてだった。

年末に向けてやることがたまっているのですぐに起動したかったのだけれど、2度目にフランスに戻り、次の日の昼間は荷物を整理、夕方から仕事しようとしたのに午後5時から半睡状態で寝落ち。

その次の日は、昼間はメールや事務手続きや不在中にたまった雑誌を読み、7時から9時過ぎまでジムとバレエのレッスンがあるのでエナジードリンクを飲んでそなえた。

そんなわけで今日の朝、フランスに帰ってはじめてラジオのニュースを聞いたのだけれど、なんだか違和感をおぼえた。日本では衆議院解散と総選挙のニュースばかりだったのにこちらの朝のニュース・ダイジェストは3つ。

最初のは、マルセイユでホームレスに社会福祉を受けさせやすくするために、ホームレスは名前や社会保険(収入がなくとも国籍がなくとも皆保険の制度がある)番号を記した黄色の三角バッジの着用を義務付けるというプランに、厚生大臣もショックを受けたという話だ。中世やナチスの時代のユダヤ人のマークとの関連がすぐに語られる。
各種行政サービスなどを受けやすくするカードを発行すること自体はいいとしても、それはサービスを受けたい時に見せればいいわけで、常に着用するのは明らかにおかしい。
たとえば国鉄のシニア料金利用可能のカードは電車の中で提示を求められれば見せればいいので、ずっと首から掛けていなければならないわけではないのと同じだ。
社会福祉にアイデンティティを見出す共和国主義が妙な方向に逸脱する例で、良くも悪くも日本では出てこない発想だ。

その次は、アルプス近くのある一家が両親と子供8人ともシリアに向けて出発したという話。ヴェールで姿を全部かくして警察に何度も注意されていた娘もいるし、長男のモアメッドはひと足先に「イスラム国」のジハードに志願して殺された可能性が強いという。この名前を見るとこの一家がアラブ系のムスリムの移民一家だと分かる。
二重国籍OKのフランスではさもありなんという話だが、これがもし日本なら日本の頭で「一家をあげて聖戦に加わる」などといわれると、「平均的な日本人」のイメージが浮かぶので、とても信じられない。

最後のニュースが、今年2400万ユーロの財政赤字を発表したばかりのヴァティカンで、数億ユーロにのぼる金が発見されたという「奇跡」の話だ。
よくきくと、別にマフィアと結びついていたヴァティカンの関係者の隠し金が摘発されたというたぐいの話ではない。細かい縦割り組織で昔ながらの帳簿をつけている教皇庁の各省を現教皇が徹底的に調査したら、あちこちから計上されていない金が出てきてその総計がすごいことになったらしい。タンス預金みたいなものもあったようだ。これからは国際会計基準にのっとったシステムにしていくと言っているそうだ。
ともかく赤字は解消された、と。
確かに浮世離れした話だけれど、日本でも地方の有力政治家の事務所なんかでは、はっきりとした隠蔽の意識がなくて同じようなことが今でもあるのと同じなのかもしれないと連想した。

この朝のニュースの三題話のどれもがあまりにもフランス的というか、日本とは感覚がずれすぎているので、ああフランスに戻ってきたんだなと実感した。

午後は室内楽の練習に行く。モーツアルトの弦楽トリオのセレナーデの中からアダージオとロマンツェ。この3週間、東京の滞在先にあるピアノでベートーヴェンを少し弾いた以外に楽器を触っていないし、ヴィオラのためのハ音記号も見ていないのに、16分音符の連続がちゃんと弾けることのありがたさをしみじみ思う。
それからプレイエルのトリオ、これも端正で、私のパートは簡単なのに弦のハーモニーの美しさを堪能できて得する気分だ。
最後がピアノを加えたカルテットでジョン・ケンバーのロマンスだが、もろシシリアンで体が心地よく揺れる上に12小節もヴィオラのソロの部分があって高揚する。こうなると私のようなバロック耳であろうがなんだろうが、イージーリスニング(というかイージープレイングでもある)の心地よさに癒される。
フランスに戻って3日目、ケンバーの曲で完全に時差が解消したというわけだ。

うちに帰ってから小学5年生の女の子オンディーヌのギターのレッスンでクリスマス曲を弾き、高校3年の男の子ユリスのピアノ・レッスンでショパンのワルツにどうやって波動を起こすかについて教える。

踊って楽器を弾くことで、やっと頭をフランス・モードにリセットできた。

次回は日本で観た芝居や展覧会について書き留めておくつもりだ。
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by mariastella | 2014-12-06 04:59 | 雑感
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