L'art de croire             竹下節子ブログ

フランスのラジオで聞いた日本の総選挙の結果についてのコメント

今朝のラジオのニュースで日本の衆院総選挙の結果が報道されていた。

日本の経済が(株価と輸出大企業の業績をのぞいて)、GDPが落ち込み、財政赤字率ばかり上がる深刻な状況なのになぜ国民は同じ政党を信任したのか、パラドクサルだと言っていた。

その解説として、日本人は苦境に陥ると、為政者を批判するどころか一致団結して戦士のようにがんばるからだと言う。
なんだか東日本大震災の後の助け合いを称賛した時のような言い方で皮肉にも感じる。

無論私は多くの人のように、共産党前議長不破哲三の京都での演説をネットで見ていたから

(こんな84歳になりたいなあ、とこれも多分多くの人が思ったことを思ったのだけれど)、
不破さんが心配していたように阿部首相が勝利したら日本はネオナチとして世界中から叩かれ切り捨てられる、みたいな感じはなかった。

ちょっとほっとする。

もっとも、今回の選挙の争点となると不都合な集団的自衛権や原発の再稼働、特定秘密保護法を阿部首相は経済政策だけで包み隠してしまっていたので、外野の「欧米」もネオナチがどうだとか考えもつかなかったに違いない。

オーストリアやハンガリーの例でも分かるが、たとえ選挙で「民主的に選ばれた」としてもそれがそのまま「正しさ」や「正義」を意味するものではないということこそ、ヨーロッパはナチスの台頭の時に学んだので、阿部首相がすでに「ネオナチ」認定されていたら選挙で勝っても勝たなくてもとっくに叩かれていただろう。

もちろん、構造改革をしないということで自分たちはドイツに散々叩かれているフランスなので、フランスの一歩前を行くデフレでマイナス成長の日本がどうやって経済を立て直すかということの方がそもそも注目されているわけだ。

ヨーロッパ経済を単独で牽引しているかのように鼻息の荒いドイツでは、2030年にはドイツが世界一の経済大国になっているなどと大言壮語する人までいるらしいのだが、ドイツは改革する時に、そもそも国民の利益よりも国家の利益を優先する国なのだ、とフランス人は言う。そして移民問題、格差問題、少子化問題もあるのだから、むしろ2030年には破綻しているのではないかと。

「経済成長」を前提に次の世代を養うという社会のシステム自体がうまく行かなくなっているのだから、やはりポスト経済成長のシステムを考えるしか解決はないように思う。

けれども、自分たちの既得権益を失いたくない、という目先の保身や損得がはっきりしている人の方が選挙に出かけることが多いのが現実なのかもしれない。

もっと不満をもってもいいはずの人々の多くも「この道しかない」トークに何となくだまされているのだろう。

少なくともフランスのラジオが想像させるように、「未曽有の経済危機に瀕した国民が一致団結して」今回の選択をしたわけではなさそうだ。

剣聖宮本武蔵の「観と見」という二種類の目の使い方のことをこの頃考える。

近くを遠くに見、遠くを近くに見るという話だ。

間違ってはいけない。誤解するとまるで逆のことになる。

まだ先のことで本質的に予測不可能なことなのに、できる範囲の準備を越えていわゆる「取り越し苦労」をして、現在の可能性を小さくして消耗してしまうのは「遠くを近くに見る」とは言わない。
遠くのものを近くに引き寄せるのではなく、自分が「今ここ」の利害をいったん離れて遠くの方に近寄るということだ。

たとえば、今の便利さや快適さや経済性の基準からいったん離れて、環境問題だとか、原発廃炉の問題だとかを、次世代の視点に立って考えて今の生き方を修正するということだろう。

もうひとつの「近くを遠くに見る」というのも、今ここで解決しなくてはならない問題を不都合だからということで見ないようにして先送りするという話ではない。

目前に迫っているので対応に冷静さを失いそうな問題を前にした時に、敢えて一歩下がって距離を置き、客観的に見るということなのだろう。

そういうものの見方をしているかを常に自分でチェックしたいと思う。
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by mariastella | 2014-12-16 03:34 | 雑感
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