景気の悪い話ばかりのフランスで最近全メディアがはしゃいだ出来事があった。
フランスの軍事技術の誇るラファル戦闘機が24機もエジプトに売れたというのだ。
雇用も増えるし経済的にはいいことだらけらしいがそれについては書かない。「武器を売る」ことそのものに忌避感情がある私にはぞっとする話だった。
フランスはもう30年もこの戦闘機を売ろうとしてことごとく失敗していた(多機能で高価すぎることもある)のだそうだ。それはアメリカに妨害されたからだという。これまで交渉していたけれど破談になった国はシンガポール、韓国、サウジアラビア、オランダ、スイス、ブラジルだそうだ。
今回急に話がまとまったのはもちろん、シッシーによる革命でイスラム兄弟党が追放されたので、エジプト軍が2014年にアメリカからの援助15億ドルを失ったせいだ(将軍の一人がフランスのプレスに、イスラム兄弟党支援のアメリカからの制裁処置だと言っている)。
金の切れ目が縁の切れ目。
アメリカはこれまでエジプトに軍事支援をすることでイスラエル・パレスティナ戦争の緩衝地帯(仲介役)にしようとしていた。縁が切れればエジプトが反イスラエルに舵を切るかもしれない。
実はそれだけではない。
エジプトがフランスにラファルを買うと言った数日前(2/9-10)にロシアのプーチンがカイロで、友好のシンボルにカラシニコフ銃をシッシーに手渡して、エジプト最初の原発をロシアが作ることが決まった。
エジプトはアメリカ離れをしても生き延びるためにロシアと接近したので、その危機を緩和するためにもフランスからも戦闘機を買うという選択をしたのだろう(スエズ運河を防衛して再開させるという経済目的ももちろんある)。
フランスはもちろん、エジプトは友好国で、優秀な戦闘機を売ることでISILと戦う支援にもなる、と言っている。
(フランスはさすがにアメリカに武器は売っていないが軍事通信機器は売っている。)
一番金が動くのが武器と原発マーケットなのかもしれないが、そらおそろしい。
ラファルは敵地を「着実に大量破壊できてしかも核兵器じゃないから地球を汚染しない環境にやさしい」兵器ということで、ある意味では、「核の抑止」みたいな人類絶滅のあやうさに立っているよりもましだというのだろうか。
「クリーンな兵器」がペイすることで世界中の核兵器がすべて廃棄されるなら「最悪よりはまし」かもしれないが、「原発」とセットとなっている時点ですでにアウトだ。
フランスでこういう状況を見聞きするだけでも暗澹とするのに、日本の首相もせっせとあちこちで原発を売りこみイスラエルに武器を売るというというのだから驚く。
エジプトやサウジでのアメリカとフランスの駆け引きはまだその戦略のロジックが分かる(一国に依存せずにリスクを分散させるとか)のだが、日本の首相の危機管理のロジックは分からない。むしろ進んでリスクを高めているような気がするのだけれど…
中東やアフリカで何が起こっても何か「対岸の火事」風だったころの日本が今となっては懐かしい。