L'art de croire             竹下節子ブログ

ギリシャ危機とギリシャ正教 その4

ヘリオポリスの住宅街にあるセラフィム・ディミィトリウ司祭の教会付近では貧困は表だっては目に入らない。

車を運転する人たちは赤信号では停まらないことがあっても、教会の前を通る時には十字を切ることを忘れない。

司祭はリサイクル品を回収し、毎朝15人ほどの老婦人がボランティアで貧しい人に配る200食を用意する。
夏は米やパスタと共に、協賛店で肉を買えるクーポンを配る。
教会前のレストランはサッカーの試合を無料で見せる大型スクリーンを用意している。

2005年に3人の主教が贈賄で逮捕されたのは事実としても、全体として、教会は国に代わって公共サービスを受け持っている。

9000人の正教司祭は月1000ユーロから1500ユーロを国から受け取るが、今は新しいポストを得るのは困難だ。

聖職者を目指してビザンティンのイコンの修復をする研修を数年受けていたある男性は、アテネで働くことをあきらめて、ドイツの市バスの運転手として月2500ユーロを得ている。

45歳のニコデムス・ファルマキスはマラカサ修道院で寝泊まりする修道士だが毎朝、アテネのビバリーヒルズと呼ばれるグリファダ地区にあるダウン症女性の施設に行く。

スパルタ、ピルゴス、トリポリなどにもある教会施設で、ダウン症の娘を持つマリア・ココリという資産家の夫人が土地を提供した。

ファルマキスは、そこにある事務室から教会の人道支援を統括している。

2014年に83主教区で公共福祉に使った額は1億2000万ユーロを超える。
この10 年で10億ユーロ以上だ。

精神障碍者のための施設が9つ、

無償の老人施設が83、

養護施設が12、

薬物中毒者の施設が5つ、

子供センターが51、

学生寮が13、

シングルマザーの施設が2つ、

前立腺がんのためのクリニック、

アテネの中心街にある無償の薬局

などが運営されている。

議員や企業メセナの担当者も連携のためにやってくる。

フランスのジャーナリストに取材をされた彼らが異口同音に口にするのは

「施しをするときは、右の手のすることを左の手に知らせてはならない(マタイによる福音書6-3)」

という1節だそうだ。

最初から無理があったとはいえ、同じEUの中で、ここまで、「政教分離」のない国での情況は、外側からはなかなか想像がつかない。

それがいい方に働くか悪い方に働いているのかは一概には言えない。

私はギリシャに行くとカルチャーショックを受ける。

10年前にギリシャで考えたことを書いたことがある。

その中で、ギリシャの中のマイノリティのことも書いた。

ここ数年の「ギリシャ危機」とそれに対応するドイツなどの言説を見ていて、いろいろ考えることがあったので、今回のドキュメント記事を紹介しておく。
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by mariastella | 2015-08-11 01:32 | 宗教
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竹下節子が考えてることの断片です。サイトはhttp://www.setukotakeshita.com/
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