L'art de croire             竹下節子ブログ

キューバとヴァティカン その3

これは前回の続きです

フランシスコ教皇がキューバに出発した。

飛行機に乗る時にまた例の黒いカバンを持っている。ほんとうにぶれない人だ。

彼がキューバに行くのは実はこれが2度目だ。

1998年の1月にカストロの夢がかなってようやくJP2がキューバを訪れた時にラテン・アメリカ代表団の一員として随行していたからだ。

JP2がハバナの革命広場でミサを挙げた時、30万人の人が詰めかけ、フィデル・カストロは敬虔な少年のようだったと言う。

JP2は1962年来のアメリカの経済封鎖を批判したが、キューバ内での人権擁護についても熱弁した。

キューバ革命とキリストの革命を混同してはいけない、とも言った。

世界がキューバに向かって開くこととキューバが世界に向かって開くことを同時に願ったのだ。

JP2の訪問はカストロにとってもアメリカに対するプロパガンダになった。

その年からクリスマスが再び祭日になった。

ハバナのオルテガ大司教は、共産政府に対立することなく、改革を促した。
そのことは一部の信者を失望させ、共産党も苛立たせた。

2012年にB16(ベネディクト16世)が訪問した時も、彼は敢えて、共産党離脱者たちと特別に会うことはしないで信教の自由を含む「抜本的な自由」の価値を説いた。

Laudato Si の回勅で新自由主義経済を厳しく批判したフランシスコ教皇は熱烈に歓迎されることだろう。

といっても、今のキューバではみんなが必死に英語を習い始めているという。渡航が完全に自由化する暁にはアメリカから年100万人の観光客を見込んでいるそうだ。
その浮き浮きした様子を見ていると、なんだか、そのうちにキューバも一気に金権主義の国になってしまうのではないかという予感もする。

逆に、JP2の訪問の際に300人の政治犯を釈放し、B16で3000人を、フランシスコ教皇で3500人を釈放するというキューバ政府だが、Human Rights Watch(HRW)の報告によると2013年に3600人だった反政府犯(キューバでは「カストロ打倒」と道で叫んだだけで逮捕され得る)が2014年には8800人以上と増加しているらしい。HRWによるとすべてのメディアは党に管理されている。

フランシスコ教皇はキューバの後、ローマ法王としてはじめてアメリカの議会で発言し、国連でも発言する予定だ。

彼は「共産主義者」のように人間が人間を搾取することを糾弾するのではない。競争力のない人には企業や社会での居場所がなくなるという現実を糾弾するのだ。

共和党の過半数はキューバへの経済封鎖継続派だし、教皇発言をボイコットすることを呼びかけている人もいる。Fox Newsなど保守派で反教皇メディアもある。

「ローマ法王は中絶とイスラム教を弾劾しているだけでいいのだ」という彼らにとってフランシスコがまことに「不都合な」客であることは間違いがない。
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by mariastella | 2015-09-20 08:31 | 宗教
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