L'art de croire             竹下節子ブログ

パリの奇跡の治癒の話 その4

(前回からの続きです)

聖歌の歌詞が書かれた紙が配られている。

派手な黄色の紙で3枚つづり。

なんと77まである。

教会で歌うのは好きな私だけれど人いきれでむんむんするこの空間でこんなにたくさん歌うなら息が上がるだろう。健康に悪そう。

と、思ったら、その中から7、8曲が順次選択されるのだった。

(紙は後で回収される。それを知らなかった私はどの曲が何番目に選ばれたかなど書き留めたり、メモを書き込んだりしていたので、返すことができずあせった。

結局バッグにしのばせて出てきたが、そういうことをして「罰が当たる」と困るので、祈りの書き込み用に置かれていたボールペンのインクの出が悪いので自分のものを置いてきた。「気は心」である。)

さて、予定された時間に神父が登場するまでに歌われた2曲がリズミカルでテンションが高くて、こんなので喉が最後まで持つのだろうか、と心配だったが、その後のは静かなものもあって、歌詞も単純でほっとした。

最初のほうのは

「ああ、愛の火よ、われらの中で燃えたまえ、命の神よ、われらを燃え立たせたまえ、天の栄光と聖霊の交信を知らしめたまえ !」

というリフレインで、

「父の愛が十字架の狂気によってわれらの心を変えた、我々の信仰を燃え立たせるためにぬるさから引き離した。」

「イエスの臨在のもとに集まった民のもとに手を差し伸べたまえ、あなたは傷ついた人を癒し迷った人を救うために来た」

という具合の歌詞。

これで人々の「癒し」への期待をぐっと高めるというわけか。

そのほかに、「イエス、イエス、イエス・・・」とイントネーションを変えて延々と、絶叫とまではいかないけれど必死にすがり、喚起する感じの唱和も繰り返される。

カトリック系のこの会がプロテスタントと決定的に違うのは、「聖体」の扱い方だ。

カトリックでは「聖体パン(ホスチア:水と小麦の無酵母パンを聖別したもの)」がイエスの肉のシンボルではなく、イエスそのものが「化体」したものだと見なされるから、金色に光る聖体器の中に納められた白く丸い煎餅が、そのままイエス・キリストである。

主が目に見えるのだ。

聖体をいただいて「食べる」のには洗礼やカテキズムなどいろいろなハードルがあるが、信者でなくても無宗教でも誰でも来れるこの集会はミサではないので「主がいる」「主を見る」というのが強調される。

神父が聖体器を掲げ、皆が感激の歌を歌い、その後で神父が聖体器を持って会衆の中を歩く。
そのためにも通路が確保されていなくてはならないのだ。

聖霊は別室にも来る、どこにでも来る、と言われた最初の言葉とは矛盾して、あの聖体器に入ったあのイエスの「肉」を近くに見なくてはイエスと会ったことにはならない、という感じがしてくる。

「早くこちらにも回って来ないかなー」とわくわく感が生まれるのだ。

「演出」はともかく成功している。

「一目見たい、うんと近くで」という単純な期待がふくらむ。

いいのか?  見るだけで ?

見ただけで「効く」なら聖体拝領で口に入れればもっとご利益がありそうだが、カトリック教会では「聖体礼拝」というのは重要な位置を占めている。

ミサの後で聖体は櫃に入れられるのだけれど、灯りのともったその前や、その扉があいた前でじっと黙想する人々は多い。

口に入れた聖体は消化管を通るが、そばで心を寄せれば「霊」と合一できるのかもしれない。

ルルドでも、「奇跡の水」を飲んだり水浴することで「治癒」を得る人もいれば、「病者のミサ」で聖体拝領して治る人もいるし、聖体行列が通るのを見る時に治る人もいる。

「霊」が治すのか、
「モノ」が治すのか、
そういう場所でそういう意欲を持つという「コト」が治すのか、微妙なところだ。

(ここで東寺の「生身供」だの高野山の御廟のことを想起するのは空気を読めない悪い子。)

ともかく、人はいつも崇拝するヒトを必要としている。

それが生身のあやしい教祖さまや生き神さまではなく、即身仏やら聖体パンなどの「モノ」や生身供や聖体行列などの「コト」に変わって、心ゆくまで礼拝できるなら、専制者に直接洗脳されるリスクは少ない。
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by mariastella | 2015-10-01 01:38 | 宗教
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