L'art de croire             竹下節子ブログ

パリの奇跡の治癒の話 その5

(これは前回からの続きです)

私は聖体が会衆の間を周っていく終着点の側にいたので、終わりの方でようやく金色の聖体器(シボワール)に入れられた「ご聖体」を拝むことができた。

ティエリー神父は数歩ごとに足をとめては、皆によく見えるように聖体器をゆっくり上に持ち上げる。

ここでは、会衆は十字を切って、多分心の中で、治してほしい所を唱えたり、「主よxxをお救い下さい」とか祈るのだろう。

その頃にはスタッフに何度も移動を命じられて祭壇の後ろ脇の一群の中にいた私は、「ようやく自分の番が来た」というような周囲の熱気をはっきりと感じた。

すると、その中から、一人の黒人女性が進み出て、手を伸ばし、聖体器の脚の部分に触れた。
消防法のことがあるから決められたところにじっとしてなきゃいけないのに、その女性は思いつめた感じで列から離れて「触れた」のである。

金属の脚の部分だけど。

このシーンはどうしても、群衆の中からイエスの上衣の裾に後ろから近づいてさわってただちに癒された女のエピソードを思い出させる。

有名な「あなたの信仰が、あなたを救った」(マルコ5、24~34)というやつで、

この人はもう12年も出血がとまらず多くの医者にかかって、ひどく苦しめられ、全財産を使い果たしても何の役にも立たず、ますます悪くなるだけで、血の穢れのためにおそらく社会的な差別も受けていた。

「せめて服にでも触れば」と思い、触れて癒されたのだが、触られたイエスは「自分の内から力が出て行ったことに気づいた」という。単に女の側の「気のせい」だけでなく、実際に「力」の伝達があったことになっている。

で、その後で、聖体器がようやく祭壇に戻った後、この黒人女性は、元の場所に立ち尽くしていたのだけれど、笑みのこぼれる口を半開きにして、見開いた両眼から滂沱の涙を流していた。

うーん、もしこの人が病気の痛みや苦しみや恐怖から来るストレスでこれまでずっと交感神経が緊張しっぱなしみたいな日々を過ごしていたとしたら、泣くことで突然副交感神経が優位になって、痛みなどが一気に緩和するなどということは大いにありそうだ。

私のいた一角だけでもそうなのだから、一時間弱の聖体器の巡行で感激によって免疫力とか自己治癒力のスイッチが入った人は少なくないかもしれない。

心身症やら「気の病」ならなおさら治ってもおかしくはない。

聖霊にインスパイアされたスタッフたちのアナウンスは続いている。

「ここに来る前に、空腹の物乞いに小銭といっしょにアクセサリーをあげた人、主は喜んでいます。ありがとうございます」

「病気の友に『不思議のメダイ』を最近あげた人、その友人はメダイのおかげで治りました」などなど。

最後に、それまでの「イエス、イエス」の一辺倒から、少し流れが変わって、イエスの母、聖母マリアに捧げる熱烈な聖歌がいくつか選ばれる。息子は恐れ多くても最後はやはり、おかあさんかなのかなあ。

「今日の集まりで治癒を得た人、後から証言に残ってください。また数日後に癒された人もそれを教えに来て下さい、」

「その後の経過も続けて知らせてください」

というアナウンスもあった。

自信満々だ。(続く)
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by mariastella | 2015-10-02 01:47 | 宗教
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